係活動を「会社活動」にするのは要注意
係のネーミングを「○○会社」にしている学級をよく見かけます。
これが要注意なのですか?
要注意です。
「なぜ、○○会社にするのか?」という、目的がはっきりしていなければ、危険としか言いようがありません。
と言いながら…私も10年前までは「○○会社」というネーミングで、係活動をやっていました(笑)。
目的ですか…?
係って、当番みたいなものですよね?
当番よりも自由度が高いですし、その分、子どもは創意工夫することができます。
ですから、先生の意図や活動の目的が、うまく子どもに伝わっていなければ、何でもありの無法地帯になります。
係活動は、子どもにとって「楽しい活動」となる場合がほとんどです。
しかし、会社活動にすると、最悪の場合…
逆に子ども達の仲が悪くなることがあります。
私も過去に失敗したことがあります…😭
仲が悪くなる!?
怖すぎます!
どうすればいいですか?
今日も一緒に考えていきましょう!
よろしくお願いします!
要注意な理由
理由をズバリ言います。
以下のようなことが起きている場合、ほぼ間違いなく、子ども達の仲が悪くなり、学級の雰囲気も悪くなります。
・「社長」「平社員」などの役職がある
・「倒産」のシステムがある
・「クビになる」子どもが出る
どうでしょうか?
こういう姿がもし学級で見られるなら、黄信号です。
かなり危険な状態だと思います。
もちろん、全ての先生が黄信号だとは思いません。
会社活動をしつつ、幸せな学級をつくっている先生もいます。
しかし、経験の浅い先生が、
会社活動の「目的」を理解せずに、「方法」だけを真似すると、学級が危険な状態になることがあるのです。
何が危険なのか、1つずつ理由を説明します。
公平・平等なはずの学級に格差が生まれます。
つまり、権力や地位の差が生まれます。
スクールカーストができあがります(かなり危険)。
いじめにも、つながります。
以下の言葉は引用ではないのですが、こんな感じのことが、書籍に書いてありました。
先生が、スクールカーストを「誘発する行動をしている」ことも多い。
【参考文献】鈴木翔,本田由紀(2012)『教室内(スクール)カースト』光文社新書
いじめにつながるような「学級内における地位の差」を、実は先生も誘発し、それを教育に利用している場合もあるのだそうです。
「倒産」「つぶれる」というネガティブな現象が、学級内で起きてもいいのでしょうか?
親や親戚の会社が、本当に倒産した子どもが学級内にいたら、その子どもはどんな気持ちになるでしょうか?
子ども自身が「他のことをやりたい」と思い、係メンバーとの合意の上で会社がなくなったのであれば、問題ありません。
これも、ネガティブすぎる現象です。
いったい「誰が」クビにするのでしょうか?
もし「社長」と名乗る子どもがクビにしたなら、これは「いじめ」の始まりになります。
もし先生がクビにしたなら、理不尽な関係性のできあがりです。
今後、その子どもに良質な教育をすることが難しい関係性となります。
「失敗したらクビになる」「失敗したら辞めなければいけない」ような文化は、学校にはそぐわないと思います。
これは、日本全体の課題であるかもしれません。
つまり、責任のとり方がよくないと思います。
どうでしょうか?
私は、「会社活動」自体が悪いとは思っていません。
ただ、「会社活動」は「取扱注意」な活動であるということを、理解した上で実践をしてほしいと感じるのです。
会社活動をするのであれば、上記に挙げたような危険性をはらんでいる、ということを理解した上で、対策をしながら進めていきましょう。
・会社活動は子どもの「やる気」を高めるには効果的
・○○会社というネーミング自体に、ワクワク感が高まる
・係は「会社みたいな活動」と伝えれば、子どもは取り組むことがわかりやすいので、先生も楽(つまり、誰かのためになる活動)
・「役職」「倒産」「クビ」など、大人社会の論理を、安易に学級文化に取り入れることは危険
・いじめや悪い雰囲気につながるような発言・行動がないか、先生はアンテナをはっておく
・学校は「子どもが何度でも失敗していい場所」であるということを、先生は忘れないようにする
それでも会社活動をしたいなら…
会社活動は、子どもにとってわかりやすい活動なので、そのスタイルを続けたい先生も多いはずです。
もちろん、全然悪いことではありません。
危険性を理解した上で、それでも続けていくのであれば、きっと良い活動になっていくと思います。
会社活動をする上で、最低限配慮した方がいいかな、と私が思うことを書いておきます。
余談ですが…
「現実の社会では倒産やクビが存在しているじゃないか。学校でもそれをリアルに教えるべきだ」という意見をもつ方も、いるかもしれません。
こうした意見に対して、私は反対の立場です。
なぜなら、学校は
「安心感という土台の上で、子どもの自信を育む場所」
だと考えているからです。
現実社会や経済界の理論は、教育現場ではそぐわないものも多いです。
小学校は、子どもが将来、厳しい社会を生き抜くためのエネルギーや力を育む、途中の段階です(発達段階)。
小学校で、社会における過酷すぎる現実を身をもって体験することが、本当に教育的なのでしょうか。
もちろん、小学校では子どもが失敗体験をすることも大切にしています。
それは先生の「教育的意図」があり、成長へ向かう「支援の見通し」を持っているからです。
係活動における「倒産やクビ」は、先生の支援不足か、外発的圧力が原因ではないでしょうか。
いずれにせよ、健やかな子どもの成長を願う指導には感じませんし、何より言葉自体がおだやかではありません。
挫折体験よりも、まず先に
「達成感や充実感」「安心感や愛着感」を実感できる教室をつくりたいと考えるのです。
そういう温かい教室には、自然と切磋琢磨する厳しさや、緊張感も生まれます。
係活動のアイディア
係と当番の違い
これは様々な書籍でも紹介され尽くしているので、簡単に確認します。
学級になくてはならない活動
・給食当番、清掃当番、日直など
※「体育係」が「体育授業の際に準備運動をする」といった、「必ずやらなければいけないこと」や「先生の仕事を代行するようなこと」しかやっていないのであれば、それは係ではなく当番です。
学級になくてもいいけれど、あると学級が楽しくなり、生活が潤う活動
・新聞係、季節の飾り係、本紹介係、生き物係…など
※「イベント係」のような係はあってもいいのですが、活動の工夫が意外としづらい(休み時間に遊ぶ以外の活動がない)です。「イベントは輪番でどの係も計画する機会をつくらない?」といった感じで伝えて、係としては無くてもいいかもしれません。
基本的に係活動は
2人以上であれば何名でやってもいいですし、
自分が楽しくて、みんなのためになる活動、
を計画できれば、どのような係でもいいと思います。
係をつくる時期
私の場合、5月まで係をつくらないことがほとんどです。
中学年以上であれば、4月に当番活動の役割分担を終え、あとは何も言いません。
すると、5月頃には、子どもから「先生、係はつくらないの?」という発言が出ると思います。
その言葉が出た時に、「○○さんが係をつくりたいと言っているけれど、みんなはどうかな?」と投げかけます。
すると、子どもにとっても、係活動の意義や目的が明確に意識されます。
なぜなら、必要感が出てから係を結成するからです。
低学年の場合は、初めての係活動だと思いますので、初めは先生主導のもと、楽しい活動をたくさん経験できるようにするといいのではないでしょうか。
そして、一人一人が自己有用感(役立つ自分)を感じられるような活動を展開したいですね。
また、稀に、学級活動や係活動に対して、嫌悪感やネガティブな感情を持って進級してきた子ども達を担任することがあります。
学級活動は「両刃の剣」なのです。
良い雰囲気を助長することがほとんどですが、先生の指導によっては、悪い雰囲気を助長することもあります。
そんな学級を受け持った時は、低学年の時のように丁寧に、係活動の楽しさを味わえるよう、支援しましょう。
【時間・場所・物】を準備する
場所は、教室です。
物については、以下の資料が参考になります。
必要な道具を、このようにして準備しておくと、子どもが自分で動き出すことができます。
私としては、このように…
「係ごとの新聞を掲示する場所をつくる」ことと、
「係ごとの小さなホワイトボードを設置する」ことをオススメします。
小さなホワイトボードは、子どもの相互交流を活性化させるので、便利ですよ。
停滞期を乗り越える起爆剤
係活動は停滞する時期がありますので、その時は起爆剤を準備しましょう。
起爆剤でオススメなのは、定期的な活動発表会です。
さらに大きな起爆剤となる方法もあります。
興味がある方は
【子ども一人一人の願いを叶える集会活動(答えは祭り型です)】
の記事も読んでみてください。
その記事に、「係活動発表集会」の実践を紹介しています。