学級活動

令和の新しい学級会

新米先生

前回の記事で、計画委員会のかわりに学級会①を実施して、学級全員で計画委員会をする方法を学びました。でも、その次の学級会②では何をすればいいのでしょうか?

ぽん太先生

学級会②は、みなさんに馴染みのある、いわゆる「通常の学級会」です。ただし、この「通常の学級会」の在り方自体も、令和の時代に合ったものにアップデートしていく必要があると感じています。

新米先生

令和の時代に合った学級会ですか?あまりイメージができないのですが…。

ぽん太先生

そうですよね!大丈夫です。今日も一緒に考えていきましょぅ。

おさらい1(提案したいこと)

この記事は以下のような人に向けて書いています。

□ 学級活動にもっと無理なく取り組める方法が知りたい

□ 学級会前の「事前の活動」に取り組む時間がない

□ 学級会の新しい進め方を知りたい

私は令和時代の新しい学級会として、主に2つのことを提案します。

令和時代の新しい学級会

・事前の活動としての計画委員会をやらない(学級会①)

・新しい学級会の型を模索する(学級会②)

前回の記事でもお伝えしましたが…

「計画委員会をやめよう」と言っても「計画委員会をしない」というわけではありません。

これまでのように休み時間や朝の時間、給食準備時間など、先生が工夫して時間を生み出すのではなく、週に1回の学級活動の授業時間だけで計画委員会も学級会も進めていこう、という提案です。

計画委員会を学級会①として位置付ける方法については、以下の記事で紹介しましたので、興味がある方はぜひご覧ください。

計画委員会をやめよう 新米先生 学級活動に取り組みたいのですが、学級会の前に「計画委員会」に取り組む時間がありません…。 ぽん太先生 そうですね。学...

おさらい2(学習過程の見直し)

前回の記事でも説明しましたが、もう一度おさらいします。

以下の表は、学級会に至るまでの「事前の活動」における、これまでの一般的な流れです。

以上のような活動を、いわゆる「事前の活動(計画委員会)」の中で行ってきました。

それを、私は以下のような流れに変えて実施しています。

こんな感じで取り組みます。

提案理由の明確化、話し合うことを決める、話し合いのめあてを決める、については1週目の学級会①を設定して、全員で話し合ったり活動をしたりしながら進めるということです。

そして、この記事では学級会②について説明していきます。

令和の新しい学級会とは

議題について

今回、私が紹介する議題は以下のようなものです。

この議題は、以下のようなことがきっかけで議題化されていきました。

子ども

運動会は終わったけれど、隣学年としか一緒にできなかったから、1年生とも一緒に運動会がしたいな。

子ども

運動会もいいけれど、毎年学校全体でやっている「たてわり祭り」も隣学年としかできなかったから、1年生とも一緒にお祭りしてみたいな。

その年は感染症対策の強化により、どの行事も隣学年との開催となってしまいました。1年生と一緒に活動することが大好きな6年生だったので、このような声が出てきたのだと思います。

このような子どもの声を受けて、1年生と文化祭(運動会とお祭り)をすることになりました。

話し合うことは、文化祭会場となる体育館の「レイアウトをどうするか?」です。

「レイアウトをどうするか?」なんて、運営的な内容であり、深い話し合いができないのではないかと感じませんか?

私も最初はそう感じて、つい介入しようとしてしまいました。

しかし、この内容には、子ども一人一人がもつ小さな問いがいくつも付随しており、子どもにとってはすごく切実で、質の高い問いだということに気がつきました。

そのことについて、この記事では詳述しませんが、いつか機会があれば記事にしたいと思います。

(学級会で「話し合うこと」を考えるときや、教科の授業で「発問」を考える時に、とても大切な考え方を、子どもから教えてもらいました。)

前時の学級会①について

私が今回提案する学級会②では、前時の学級会①で、子どもが「みんなで話し合って解決する必要がある」と考えた問い(話し合うこと)について学級会をします。

今回の議題となっている「1年生との文化祭」では、以下の6つの出し物をすることになっています。

・借り物競走

・5色綱引き→障害物競走へ変更

・食べ物屋さん

・景品屋さん

・映画(演劇舞台)

・射的とヨーヨー釣り

そして、前時で実施した学級会①で、各出し物ごとに「活動計画書を作成する活動」を実施しました(Googleスライドの共同編集で)。

つまり、「学級会①」というネーミングですが、学級会①は「実践」なのです。

各出し物ごとに活動計画書を書きながら、文化祭に向けた準備や実践を始めてみて、その結果見えてきた課題や、みんなで話し合う必要があることについてのみ、学級会を実施するということです。

学級会よりも先に、まず「やってみる」ことで、子ども一人一人にとって本当に切実な「話し合うこと」が表出してくると思うのです。

ですから、前時の学級会①では「話し合う必要があることを見つける」ことが目的でした。

そして、前時の学級会①では、やはり授業終盤で、みんなで解決すべき問い(話し合うこと)を発表する子どもが現れました。

子ども

まずは(各出し物の)ルールを決めて、「こういうルールだから、(会場となる)体育館をこういうふうに使った方がいい」とかを決めた方がいいと思う。

前時の学級会①の中でも、「(会場となる)体育館のレイアウトをどうするか?」ということが話題になっていたのですが、うまく決まらなかったのです。

レイアウトがうまく決まらない原因は、「一人一人が各出し物のルールを把握できていない上に、各出し物の担当者も自分の出し物の実施方法について明確にイメージできていない」ということです。

教師から見ると何気ないことかもしれませんが、課題解決が子どもの文脈で進んでいくことに価値があると、私は考えています。

活動を通して実践がうまくいかない原因に子ども自身が気づき、次時の学級会で話し合うことを子ども自身が提案する。

当たり前のように感じることですが、学級会で「話し合うこと」は、意外と教師側の意図が強く出ている場合が多いように感じます。

教科等の授業で例えるなら、「発問」や「本時の問い」です。

教科等の授業でも同じように、「発問や本時の問いは、目の前の子どもの姿や声からつくる」ことが大切だと考えています。

本時の学級会②について

学級会②の流れは、大まかにこんな感じです。

これはあくまで一例ですので、必ずしも毎回この流れで進むわけではありません。

学級会②の在り方は、以下のような感じです。

学級会②の在り方

・前時の学級会①で、子どもから出た「本時の問い」を解決するために話し合う

・45分間、常に全員で話し合う(一斉ミーティング)ことはしない

・基本的にはグループや個々で自由に「本時の問い」の解決を進める(局所ミーティング)

・「本時の問い」に付随した「個々がもつ小さな問い」も、局所ミーティングで解決していく

・司会は「全員で吟味したいこと」や「全員で確認したいこと」が見つかった時のみ、全員で話し合う時間を設ける(一斉ミーティング)

・司会は、「本時の問い」に対してどのようにして解決策をまとめるのか、司会グループで相談しながら考える

※「本時の問い」とは、いわゆる「話し合うこと」です

※一斉ミーティング → 従来型の45分間一斉の学級会による課題解決

※局所ミーティング → 子どもが自由に動き回り、自由な場所・人とで課題解決をする

明確な「学級会の型」を示すことが難しいのですが、それは「学級会の進め方」さえも司会グループの子どもに委ねているためです。

「学級会なんて、慣れていない子どもには進められないのでは?」

「いきなり最初から委ねるなんて、無理じゃないの?」

という声が聞こえてきそうです…。

しかし、私はハッキリと「大丈夫です」と答えます。

なぜなら、子どもは幼児期からすでにたくさんの「話し合い」を経験しています。

「オモチャや遊び道具をどうやって公平に使うか」「お友だちとどうやって楽しく過ごすか」などの課題解決を、すでに何度も経験しています。

私は1年生の担任をしていた時でさえ、学級会のシナリオを準備したことはありませんし、学級会の型を教えることはしませんでした。

委ねる」というのは「丸投げする」「すべて子どもに任せる」ということではなく、基本的には子どものやりたいことや考えたことで授業を進めながらも、「子どものサポーターとして教師も常にそばにいる」ということです。

私は

「困ったら先生に声をかけてね」

「困ったときは先生がいつでも手伝うからね」

と子どもに伝えています。

子どもに課題解決の力を育むためには、子ども自身に何度も課題解決の機会を経験してもらうしかありません。

しかも、子どもにとって本当に切実な、本気になれる課題解決です。

最初は課題解決に対して不慣れな子どもも、先生に励まされながら一緒に活動をしてもらえれば、安心して取り組むことができます。

そうやって、だんだんと質の高い高度な課題解決に取り組む力が育まれていくのだと思います。

局所ミーティング

本時の話し合うこと(大きな問い)は「会場(体育館)のレイアウトをどうするか」です。

これまでの学級会であれば、このことについて全員で話し合っていく流れが一般的かと思います。そうではなく、子どもが自由な場所で、自由な方法で、話し合いたい仲間と、この課題解決について話し合っていきます。

これを局所ミーティングと呼ぶことにします。

その際、子どもには次のように話しておきます。

ぽん太先生

他にも解決したいことがあったら話し合って、この時間で協力して解決していってね。

すると、体育館のレイアウトを決めることに付随して、以下のような様々な小さな問いがあることが見えてきます。

こうした小さな問いを先に解決することが、実は大きな問いである「体育館レイアウトをどうするか」の解決につながっていきます。

こうした小さな問いは局所ミーティングをすることによって、お互いの要望や願いを調整し合って、協働的に解決されていきます。

学級会の終着点

レイアウトに関する小さな問いが解決していくと、大きな問いである「体育館レイアウトをどうすればいいか」が具体的に見えてきます。

解決した小さな問いは、その都度子ども達へ報告して全体共有していきます。

それでも最後、まだ数名の子どもが困り感を残したままでした。

そこで、その時の司会の子どもが全体にこう呼びかけました。

司会

まだ困っている人にレイアウトをかいてもらって、それをみんなに見せる(再提案する)ことにしてもいいですか?

こうして、まだ困っている数名の子どもが教室前方に集まり、iPadでレイアウトを決めていきました。

各出し物のグループからの要望も考慮しながら、レイアウトを決めていきます。

教室前方でレイアウトを話し合っている間は、それ以外の子どもは準備を前に進めたり、まだ話し合う必要のあることを解決する局所ミーティングを続けます。

しばらくして、決まったレイアウトを全員へ提案して、この日の学級会は終了しました。

新しい学級会の在り方

令和の新しい学級会の型として、「この方法」というものを明確に示すことはまだできませんが、大切にしたい学級会の「在り方」は見えてきました。

話し合う前に活動から始める

先述しましたが、学級会というと「全員一斉による話し合い活動」というイメージがあるのではないでしょうか。

しかし実際は、何らかの活動をしないことには、「話し合う必要があること」は見えてこないのではないでしょうか。

45分間の学級会の中でも、活動→話し合い→活動→話し合い…というふうに、何らかの活動をやってみて見えてきた問題を全体で確認する・解決する、解決したらまた活動…を繰り返す方がいいかな、と思います。

これは、学級会だけでなく、どの教科の授業でも同じような考え方だと思います。

子ども一人一人のアウトプット量を増やす

45分間ずっと全員一斉での話し合いを続けると、どうしても発表する子は偏ってきますし、よくて半数くらいの子供しか発言しないのではないでしょうか。

それが悪いとは思いません。

仲間の意見を聞きながら、自分の考えを深め、じっくりと考える時間を過ごしている子どももいると思います。

しかし、授業である以上、インプット(聞く時間)とアウトプット(発言・表現する時間)のバランスは気になるところです。

45分間の中に、アウトプットの時間も適切に設定されているからこそ、豊かな学びとなり、一人一人が充実感を味わえる時間になると考えています。

むしろ、一人一人のアウトプットの時間の方を多く設定したいと思っています。

そのために局所ミーティングを中心とした学級会を展開します。

子ども一人一人がもつ「問い」も解決する

従来の学級会では、45分間全員一斉で「1つの問い(本時の話し合うこと)」を解決することが多かったのではないでしょうか。

しかし、子どもは「本時の話し合うこと」に付随した、「個々の小さな問い」をもっていることもあります。

45分間、常に全員で話し合いが進んでしまっては、こうした「個々の小さな問い」を解決する時間はありません。

しかも、「本時の話し合うこと」にすごく関係のある「個々の小さな問い」も存在するのです。

そうした問いをもった子どもは、最後までモヤモヤした気持ちで過ごすことになります。

ですから、局所ミーティングの時間や、子どもが自由に動き回れる時間を、学級会の中にたくさん設定するようにしています。

協働性が育まれた学級では、子ども一人一人が協働性を発揮してくれるので、小さな問いは近くにいるお友だち同士で解決してくれます。

各教科の学習で身につけた学び方を活かせるようにする

課題解決の方法は、子ども一人一人、本当に個性的で「自分らしさ」があります。

例えば、今回の記事で紹介した学級会では、司会の子が「まだ困っていることがある人は前に来てください、一緒に考えましょう」と言って、困り感のある仲間を最後まで大切にする姿が見られました。

この司会の子は、算数や国語の授業では、逆に「仲間から助けてもらっている」ことが多い子どもでした。

ですから、普段の「お返し」をしてくれているようにも見えました。

授業の中で、自由に動ける余白が適切に設定されていると、子どもは自分のもっている資質・能力を最大限に活かしながら、その子らしい考え方で、課題解決をする姿を何度も目にすることができます。

終わりに

今回は、計画委員会を週に1回の学級活動の授業時間だけで実践していく方法を紹介しました。

これはあくまで一例であり、私の考えですので、ベストな方法だとは思っていません。

「全ての先生が無理なく学級活動に取り組めるようにするには、どうしたらいいのか」という考えから生まれた方法です。

この記事が誰かのお役に立てると嬉しいです。

この実践の続きである「学級会②」についても、次の記事で紹介したいと思います。