初任の頃に大切なこと
この話題は、後輩教諭からの質問があったので、記事にしようと思いました。
私のように、先生を始めたばかりの人にとって、大切なことって何でしょうか?
私も、初任の頃は、先輩からたくさんのことを教えていただきました。
先輩から教えていただいたことで、「よかったな」と思うことを、お話ししましょうか?
ぜひ聞きたいです!
ただし、これはあくまでも私の例なので、「必ずこうしなければならない」と思わないでくださいね。
アドバイスは「どの先輩に言われたのか」とか「どの時期に言われたのか」ということも重要です。
字面だけだと、役に立たない場合がほとんどです。
しっくりきたものだけを、心に残してください。
先輩方から聞いた言葉で、私が大切にしている言葉を紹介します。
しかしこれは、私にとって…
「初任の頃の心構え」ではなく、
「今(教職18年目)でも大切にしている心構え」です。
誰かのお役に立てれば、うれしいです。
教育は待った無し
大学を卒業した4月、3年生の担任をすることに決まりました。
学校が始まって1週間ほどしたある日、先輩とこんな話をしました。
先輩「仕事はどう?」
私「まだ慣れていませんが、少しずつ慣れていきたいです」
先輩「お前が慣れている間、子どもはどうする?」
先輩「お前が慣れるまで、ずっと待っていないといけないのか?」
私「…。」
先輩「教育は待った無しなんだ。子どもの前に立ったら、自分は先生なんだと覚悟を決めろよ」
先輩「お前が“先生”になるまで子どもは待たない。たとえ力不足でも、今持っている自分の力で、目の前の子ども達に全力で向き合うんだよ」
先輩「子どもにとっては、1年目も10年目も関係ない。子どもの前に立つからには、みんな同じ先生なんだ」
私「…はい。」
目が覚めたような気持ちになったのを覚えています。
私は、仕事をしながらも「初めての教職なんだから、大目に見てもらえるだろう」という気持ちが、どこかにあったのだと思います。
それを見透かして、先輩は釘をさしてくれたのだと感じました。
その後、私が心に決めていることは…
先輩と話した日が、本当の意味で「先生になった日」だったことを記憶しています。
給料の5%は本を買え
これは、初任の頃に先輩に言われて、今でも実行しています。
私が初任の頃は、インターネットというよりは、まだ本の時代でした。
先輩は…
「毎月、給料の5%くらいは本を買って、新しい教育技術や、考え方を身につけたほうがいいよ」
と教えてくれました。
今となっては、この読書習慣に助けられています。
もちろん、買う本は教育書だけではなく、小説やビジネス書なども書いますが…。
初任の頃は授業のやり方が全然わからず、45分を無事に乗り切る事さえ出来ませんでした。
だからこそ、本に頼りました。
本に書いていあることを、ひたすらマネしました。
週末は、朝から昼まで本屋で立ち読みして、昼食を食べて…
(昼食はだいたい、本屋の隣のマック)
食べ終わったら、また本屋に行って夕方まで立ち読みして…
厳選した何冊かを購入して帰宅、という1年を過ごしました。
あの頃のことは、よく覚えています。
最初の10年間は、とにかくハウツー本を中心に読んでいました。
それからあとは、いわゆる「教育書」を手にとるようになりました。
教育書を読む頃には、ハウツーは自分で考えることができるようになっていました。
それもこれも、たくさんの本で基礎固めをしたからだと思います。
いきなり「自己流」で始めていたら、きっと満足のいく「自己流」さえ手に入らなかったと思います。
教育には先達の実践が数多くあります。
それらを理解せず、闇雲に自己流を磨くなんて、コスパが悪い上に、独りよがりで不安定だなぁと、個人的には思います。
YESと言ってから考えろ
何か仕事をお願いされた時は…
「まずはYESと答える。出来るかどうかは、あとから考えればいい」
と、教えていただきました。
(パワハラとか言われそう笑)
先生をしていると、色々な仕事が舞い込んできますよね。
・研究授業の授業者をしてもらえますか?
・○○大会で実践発表してもらえますか?
・校内研主任をしてもらえますか?
・研究会の事務局長をしてもらえますか?
・プロジェクトを立ち上げてもらえますか?
・○○の研究員をやってもらえますか?
・○○研修で出張に行ってもらえますか?
などなど…
これらは全て、実際に私が言われたことのある言葉ですが、私は18年間一度も「NO」と言ったことはありません。
後悔もしていません。
それどころか、感謝しています。
先輩方からいただいた、たくさんの仕事が、私を大きく成長させてくれました。
やったことのない仕事は、いつでも私の視野を大きく広げてくれました。
「無理でしょ」と感じる仕事量をこなした時期があることも、自分の自信になっています。
でも、これからは、少しくらい「NO」と言おうと思っています(笑)
もう中堅の年だし、体調を崩すのもイヤなので。
元気が150%くらい必要
「初任の頃は、150%くらいの元気がないと、これから何十年も先生はできないよ」
先輩が言っていた言葉です。
これは、私が言われた言葉ではなく、私が10年目くらいの頃に、先輩が初任の方々(30名くらい)へ、言っていた言葉です。
どういうことかと言うと…
初任者研修の授業研究会で、初任者の皆さんのモチベーションが、低い感じだったのです。
進んで発言する方が少なく、シーン…みたいな雰囲気でした。
先輩の伝えたかったことは、こんな感じだと思います。
初任の時点で、積極的に発言をしない、学ぶ意欲が感じられないようでは、今後も厳しいよ。
だって、歳を重ねたら元気も減っていくんだから。
100%の元気では、足りないよ。
私は、初任だからといって、いわゆる「元気な若者」である必要はないと考えています。
でも、勇気を出して研究授業の感想を述べたり、質問をしたりする姿勢は大切だと思っています。
それは、授業をしてくれた人への敬意と感謝を示すことになるからです。
そこに、自分の元気を使いたいなぁとは、思うのです。
ここに来なかったら、一生知らないままだったよ
先生になってすぐの頃、ある先輩が、
「ポン太、県外の○○小学校の研究発表を見に行かないか?」
と、声をかけてくれました。
その頃の私は、わざわざ県外まで研修に行くなんていう考えは、全くありませんでした。
しかも、飛行機代や宿泊費で5万円ほどかかります。
もちろん、全て自費です。
ですが、特に迷うこともなく、先輩と一緒に県外の研究発表会に参加しました。
はっきり言って…感動でした。
様々な教育観、教育方法があることを、目の当たりにしました。
それから私は、年に3回くらいは、県外研修に出かけるようになりました。
先輩は言いました。
「ここに来なかったら、一生知らないままだったよ」
「そう考えたら、5万は安いよな」
日本中に、素晴らしい実践をしている先生がいます。
想像ができないほど、素晴らしい学級が存在します。
自分が知らない、素晴らしい教育観を語ってくれる学者がいます。
それを一生知らないままで過ごすなんて、肌で感じることのできるチャンスを逃すなんて…もったいないと考えるようになりました。
必ず発言するんだよ
県外研修の話の続きになりますが…
研修や授業研究会の場では必ず、「質疑応答」や「研究協議」の時間がありますよね。
そういった場では、
「必ず手をあげて、何か発言するんだよ」
と教えてもらいました。
主体的に参加することで、自分自身の学びは一層深まります。
それに、「必ず発言するぞ」と決めてから研修に参加すると、本気度が全然違います。
当然、人一倍学びは充実します。
これは、子どもの前でも同じです。
初任の頃の私は、学年集会や行事指導の時など、先輩が子どもに話すのをただ黙って見ていました。
そんな時も、その先輩に
「毎回一言くらいは、何かしゃべったほうがいいよ」
と言われました。
子どもの前に立つ時も、「何かを伝えるのだ」という責任感や緊張感が、質の高い関わりを生み出すのだと思います。
方法とは意識である
「みんな、方法論ばかり追いかけるやろ。でもな、方法とは意識やねん。だから、先生は意識の部分を鍛えな、結局方法もうまくいかんねん」
そんなことを、関西出身の先輩が語ってくれました。
その先輩も、何かの本で読んだ…と、話していたと思います。
つまり、私たちが子どもに何かしら働きかける時(方法)、どのような働きかけをするかを決定づけるのは、その先生の教育観や理念(意識)である、ということです。
先生は、1日に何100回も、子どもに何らかの方法で働きかけます。
その方法のほとんどは、
先生が瞬間的に判断して、どう働きかけるかを決めているはずです。
つまり、働きかけは、その先生の教育観に左右されているのです。
だからこそ、先生は
「意識(教育観や理念)を鍛える必要がある」
ということなのです。
「子どもが考えることを促す先生」
「子どもが考えるよりも自分が指示する先生」
などの違いは、わかりやすいのではないでしょうか。
あえて例は示しませんが…。
対話の力
私の好きな先輩が、
「対話の力ってすごいな」
と、よくおっしゃいます。
教材研究や生徒指導、仕事や人生の課題に行き詰まった時、皆さんはどういう風に解決しているのでしょうか。
私はとにかく、
「信頼できる先輩や友人に意見を求める」ことにしています。
「信頼できる」というのは、遠慮せずに厳しい意見でも言ってくれる人のことです。
「ありきたりで、普通だな」と感じるかもしれません。
しかし、意外とやっていない方もいるのではないでしょうか。
私は授業や指導に困った時、同僚というよりは、
きちんと議論をしてくれる先輩や友人に連絡をして、喫茶店などで夕食をとりながら、「対話」をします。
すると、自分では考えもしなかった視点や突破口が、必ず見えます。
すごく価値のある時間です。
相手の時間を奪わない
これはマナーの話題になります。
先輩や管理職に何かを質問する時…
いきなり相手のところへ行って、
「すみません、○○について聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」
という聞き方をしていませんか?
以前の私はやっていました…。
先輩には、こう教えてもらいました。
「質問がある時は、“相談したいことがあるのですが、いつでしたらお時間いただけますか?”と聞くんだよ」
「みんな忙しいから、自分の都合で仕事を中断させるのはよく無い。いつだったら時間をとれるのか、相手に聞くんだよ」
このマナーは、今でもとても役に立っています。
大抵の場合は、「別に、今でいいよ」と言われるのですが、時々、
「10分後でもいい?」
「お昼休みがいいな」
と返されることもあります。
こんな時、突然質問しないでよかったなぁと思います(^_^;)
まずはやってみる
先輩や同僚から
「こんな指導方法があるよ」
「こんな授業の方法はどうかな」
ともちかけられた時、皆さんはどうしますか?
「自分はいいと思わないから、やらない」
という選択も、もちろん有りです。
ですが私は、先生になって10年くらいは、
「まずは色々な方法をやってみる」ことも大切だと思っています。
なぜかというと、やってみない事には、その教育方法のメリットもデメリットも実感できないからです。
先輩方が勧めるからには、必ず理由があります。
私はそれらを、自分の心と体で、しっかりと納得したいなぁと思います。
だから、私には、もう捨ててしまった教育方法もたくさんあります。
それらは、自分で試してみたからこそ、自信を持って捨てることができました。
逆に、やってみると意外と新たな発見や気づきがある場合も、ありました。
様々な教育方法を、捨てるにしろ、取り入れるにしろ、できるだけ身軽な若手時代に、肌でしっかりと感じてみるのもいいかな、と思います。
この記事では、働き方改革の進んだ現代においては、時代錯誤な考え方もあったかと思います。
あくまでも参考に…という気持ちで、読んでいただければ幸いです。