先生にとって、子どもとの信頼関係を築く必要があることは、言うまでもありません。
では、保護者とはどうでしょうか。
基本的に、子どもから信頼されれば、保護者からの信頼も得やすいことは事実です。
なぜなら、子どもが「今日学校でこんなことがあったよ、楽しかったよ」という風に、家庭で話をしてくれるからです。
しかし、
全ての子どもが、家庭で学校の話をしてくれるとは限りません。
ほとんど話さない子どももいます。
また、話してもうまく伝わらない、1番伝えて欲しいことが伝わっていない…そんなことはよくあります。
きっと先生は、日々素敵な実践を重ねているはずです。
それがうまく保護者に伝われば、教育効果は格段に上がります。
そんな素敵な先生の姿を、過不足なく保護者に伝える方法があります。
保護者から信頼される方法
その答えは
「学級だより」です。
普通…と感じたかもしれませんが、それは学級だよりの内容が、普通だからです。
私は先生になってから18年間、毎年学級だよりを発行してきました。
たくさんの失敗もしましたが、学級だよりのおかげで、助けられたことがたくさんあります。
現在の学級だよりは、私の学級経営を支える、重要なツールの一つにまで成長しました。
学級だよりは、形式的な連絡用のお手紙ではありません。
先生の「がんばり」や「教育観」が効果的に伝わり、確実に保護者の信頼を得られる働きかけの1つです。
そのためには、書く内容と書き方に工夫が必要です。
ちなみに、
「子どもから信頼される技」については、こちらの記事をお読みになってください。
保護者から信頼されると何が起こるのか
これは断言できますが、保護者からの信頼を得られれば、確実に学級経営は充実しますし、楽になります。
なぜなら、保護者からの援護射撃がもらえるからです。
これは、はっきり言って超強力です。保護者が信頼を寄せて、「いい先生だよね」と話している先生に対して、子どもは荒れたりはしません。
逆に、もし保護者が先生に対して不信感や負の感情を抱いていた場合、それは口に出さずとも確実に子どもには伝わっています。
そうなると、その子どもと信頼関係を築くことは、かなり困難になります。
そうした子どもが1人でもいると、学級はそこからほころび始めます。程度の差はあれ、学級崩壊を引き起こします。
確実に、
全ての保護者に「0よりは上」の感情を、先生に対して持ってもらう必要があります。
「0より上」であれば、保護者によって程度の差があって構いません(というか当然、差が出ます)。
「0より上」というのは「あの先生は悪い先生ではない」「普通以上にがんばってくれている」「うちの子どもを見てくれている」と、全ての保護者が感じることです。
そうなってくると、先生は本当の意味で学級経営に集中できます。
保護者は先生の味方ですので、余計な保護者対応にエネルギーを削がれることもありません。
例えば、連絡帳などで「明らかに不信感を持たれているなぁ…」と感じるコメントをもらったことはありませんか?(私はあります)
なければすごい先生です。
保護者からの信頼を得ていれば、何かトラブルがあった時も、「あれ?こちらのミスかな?先生どうしたの?」というスタンスで、話を切り出してもらえます。
それを戦略的に、確実に行うことができるツールが「学級だより」なのです。
学級だよりを書くための3つのコツ
私は、学級だよりを書く時間は「20分以内」と決めています。
私は、特別にタイピングが早いわけでもありません。
タイピングゲームの寿司打では、中級コースをようやくクリアできる程度です(笑)。
そんな私でも、20分以内に1枚の学級だよりを書き終えます。そのコツを紹介します。
決まった時間内(20分)で書き終える
タイマーで20分を計っていた時期もありました。
何故そこまでするのか…と思われるかもしれませんが、学級だよりを無理なく効果的に続けていくためには、時間管理は必須です。
長くかかり過ぎると、辛い仕事となり、継続できなくなります。
定期的に発行できない学級だよりは効果がないどころか、あまりにも発行スパンがバラバラだと、保護者の信頼を失いかねません。
毎日なら毎日、週1なら週1と、きちんと発行日を伝え、それを守ることは「信頼」につながります。
もちろん「不定期」と伝えておいてもいいのですが、その場合は週2以上は発行したほうがいいと思います。
本当に不定期で、全く発行しない月があったりすると、正直何のための学級だよりなのか、わからなくなります。
書く時間帯を固定する(ルーティン化する)
私は、
子どもが下校した後、すぐに書くようにしています。
そのために、子どもの下校時刻は厳守しています。
ダラダラと子どもを残したりせず、下校開始時刻になったらすぐに子どもを帰します。
下校後は、学年会や職員会議をする日もあるかと思いますが、子どもをすぐに下校させれば、その前に学級だよりを完成させることも可能です。
全て書き終えることができなくても、10分だけでも取り組んでおくと、残りは会議が終わった後にやっても10分で終わります。
学級だよりはなるべく、子どもが帰った後にすぐに書くことをオススメします。
理由は書く内容を「忘れてしまう」からです。
放課後すぐであればあるほど、記憶が新鮮で集中力も高まったままなので、あっという間に書き終えることができます。
ネタは1枚の付箋紙にどんどんメモしておく
先ほどもお伝えしましたが、人間はすぐに忘れます。
いざ、学級だよりを書く時になってから「書くネタ」を考えていたのでは、効率が悪すぎます。
子どもが登校してから下校するまで、
「今日はこれを学級だよりに書こう」と思ったネタは、どんどんメモしておきます。
読む人は自分だけなので、なぐり書きで構いません。
そして放課後は、そのメモを見ながら一気に書きます。
また、
気になった場面を写真に収めておくのもいい方法です。
放課後に写真を見ることで、その場面のことを思い出すことができます。
写真を、そのまま学級だよりに掲載することもできるので、一石二鳥です。
どのような内容を書くのか
実際には、どのような内容を学級だよりに書けばいいのか、考えていきます。
これが一番重要です。
どの内容を書くにせよ、
大切なのは先生自身の「ものの考え方」と「子どもの見方」です。
文章には、人格や教育観が表れます。
しかも目に見える形で残りますので、配慮が必要です。
とは言うものの…あまり難しく考えず、
「子どものよさを積極的に伝える」というスタンスでいれば、大丈夫だと思います。
基本的に学級だよりでは、「子どものよさ」のみを伝えます。
例外については後ほど詳述します。
子どもの素敵な姿、行動(ほめること)
先生が「いいな」と感じた子どもの姿を、どんどん載せていきます。
つまり
「子どものよさ」を見つけ、伝えていくのです。
そうすることで、保護者は
「子どものよさに気がつく先生だな」「前向きな先生だな」「子どものことをよく見ているな」と思ってくれるはずです。
私は、個人名もどんどん載せています。
例:「給食をこぼしてしまったお友だち」を助けたエピソード
昨日の給食時間のことです。お膳のバランスを崩してしまい、給食を床に落としてしまったお友だちがいました。それに気がついた、はな子さん、けんじさん、さくらさんが、すぐにかけよって来て、床に落ちた食器などをサッと片付けてくれました。まるで何事もなかったかのように、自然に行動してくれたのです。落としてしまったお友だちも、気を抜いていたわけではありません。「全然大丈夫でしょ」と言いながら、3人が一緒に片付けをしてくれて、とっても嬉しかったはずです。私たちにできることは、フォローをすることです。はな子さん、けんじさん、さくらさんの、お友だちをフォローする優しい姿に、心が温かくなりました。
こんな感じでしょうか。
子どもの素敵な姿は、「よさを見つけよう」という気持ちでいると、1日の中でいくつも見つかります。
もちろん、個人名だけでなく、学級全体をほめる内容を書く場合もあります。
また、
「先生は誰かが失敗した時は、フォローすることを大切に思っているんだな」という教育観も伝わります。
高学年であれば、保護者だけでなく、子どもにもその価値が理解できるので、
「先生が大切にしたいこと」が、学級の風土として根付いていくきっかけになります。
ですが、一つだけ注意しなければいけないことがあります。
子どもの名前を、何回掲載したのか把握しておく
これをしておかないと、「特定の子ばかりが褒められている」という印象を与えてしまいます。
掲載回数を平均にする必要はないですが、例えば毎日発行しているのであれば、
最低でも月に1回は「我が子の名前が出ている」か「我が子が中心の写真が掲載されている」ことが必要だと思います。
個人名で学級だよりを書くことは効果絶大です。
これは18年間ずっと続けてきた、紛れもない事実です。
保護者も子どもも、学校からのお手紙に名前が載ることは、とても名誉なことに感じるようです。確かに、配布物に我が子の名前が載ることなんて、滅多にないですよね。
しかもそれが賞賛される内容であれば、ものすごく嬉しいはずです。
1度だけ、これで失敗したことがあって、「うちの子はあまり掲載されない。ひいきだ」と言われたことがあります。
先生になって5年目の年でした。こうなると逆効果です。ぜひ気をつけてほしいと思います。
全教科の授業の様子
学校で、
子どもが「どのような学習をしていて」、「どんな風に学んでいるのか」を保護者に伝えることは、大きな安心感を生みます。
今、算数では「大きな数」を勉強していて、こんな発言や学びがありましたよ、ということを伝えるのです。
何の学習をしているのか、ということが保護者へ明確に伝わるので、家庭学習のサポートも得られやすくなります。
これは、私としては全教科でやる方がいいと思っています。
日替わりで様々な教科を掲載するので、
単元の「はじめ頃・中頃・おわり頃」を掲載するつもりでいると、いいのではないでしょうか。
道徳や学活は週に1回なので、全時間掲載しています。
授業の様子を
「短時間で効果的にまとめる方法」については、こちらの記事で紹介しています。
授業の様子を掲載する時は、2通りの方法を用いています。
授業の板書写真をそのまま載せる
授業の板書写真を掲載し、それを解説するような文章にします。
子どもの発言などを
板書する際に、発言した子どもの名前も板書しておくと、保護者は「我が子が発言した内容だ」とわかりますし、先生も授業の内容を思い出しやすくなります。
この授業では「ここが難しかったので、ご家庭でも聞いてみてください」とか「こんな考えが出るなんて、すごいです」ということや、授業の流れなどを説明すると効果大です。
私たちのような「先生」が授業を解説すると、すごく「専門的」にみえるようです。
先生の専門性を感じると、保護者の信頼感は高まります。
子どもの活動の様子を写真で載せる
これは、保護者としては嬉しいですよね。
我が子が一生懸命に活動している様子や、発表している様子が掲載された学級だよりは、宝物になるかもしれません。
写真は「誰が掲載されたか」を、2週間に1度は確認をした方がいいです。もっと手早い方法としては…
ということです。
国語や図工で作品を作った時などは、その作品を手に、一人一人の写真を撮ればいいと思います。
集合写真で済ませてしまうのは、あまりオススメしません。中央に写っている子以外には、きっと特別感はないからです。
日常の何気ない1コマ
これも好評です。
特に以下のような場面は、保護者は見る機会があまりないので、興味を持ってくれます。
このような時間に子どもの様子を撮影し、吹き出しなどで先生のコメントを一言添えて、掲載します。
写真の下に一言書くだけでもいいです。
学級全体を強く叱ったこと
先ほど、学級だよりは「子どものよさのみを伝える」と書きましたが、
これが唯一の例外です。
個人指導ではなく、学級全体を強く叱った内容については、必ず掲載した方がいいです。なぜなら…
子どもの口から伝わった場合、子どもがうまく伝えることができずに、
「なぜ先生はそんなことで、こんなに強く言ったんだ」と、誤解されることがあります。
また、子どもによっては「私は関係ないのに叱られた」と感じている場合もあり、家庭で愚痴をこぼすこともあります。
ですから、
「なぜ全体での指導が必要だったのか」とか「先生はどのような思いで強い指導をしたのか」ということを、温度差が出ないように、全ての保護者に伝える必要があります。
先生が大切にしたいことを、子どもが完全に理解することも、それを保護者に伝えることも、非常に難しいことなのです。
学級全体に強い指導をした時は、誤解が出ないよう、きちんと保護者にも説明しましょう。
そうすることで、
「先生は良いことばかりを書くのかと思ったが、優しいだけでなく厳しい一面もあるのだな」という印象を与えるはずです。
それは緊張感とメリハリを生み、先生へのさらなる信頼につながります。
保護者にとって有益な情報
有益な情報というのは、「プラスアルファの親切」や「丁寧な連絡」だと考えてください。
基本的には、
「お知らせすることで保護者も助かるだろうな」という思いで、内容を考えると良いのではないかと思います。
お知らせを意識しておくことで、先生自身も見通しをもつことができ、あわてずに済みます。
学級だよりが最大の効果を発揮する時
現在は、まさにその時だと言えます。
なぜなら、
コロナウィルス感染症対策で、どの学校でも、行事や授業参観を実施することができていないからです。
保護者は学校の様子を知ることが、過去最高にできていません。
だからこそ、
毎日学校の様子を伝えてくれる先生は貴重ですし、保護者にとってはありがたいものです。
こういった言葉を、よく耳にします。
果たして本当にそうでしょうか。
私は学級だよりを毎日発行していますが、はっきり言って毎日20分で得られる効果としては、かなりの見返り(効果)です。
これ以上にコスパ最強な教育的働きかけを、私は知りません。
この言葉も、よく耳にします。
しかし、学級だよりは放課後に書きますので、子どもと過ごす時間は十分大切にできています。
むしろ、子どもと過ごしている間も積極的に「子どもの良さを見つけよう」としながら、意図的に子どもと関わります。
ただ何となく子どもと過ごすよりも、こっちの方がずっと意図的・教育的な関わり方だと、私は思います。
現在、学校はまさに予測困難な状況となってきました。
子どもも保護者も、これまでには無かったストレスや、不安感を抱いている方も多いはずです。
こんな時代だからこそ、「子どもの姿」と「先生の教育観」を発信する学級だよりが保護者に安心感を与え、ひいては、子どもと先生の幸せにつながっていきます。
また、学級だよりだけではなく、
「日記で子どもから信頼される技」もありますので、そちらもぜひ読んでみてください。