前回の記事では、導入をシンプルにすることで教材研究の時間を少なくすることを学びました。
でも、前時のおさらいなどをする時間は必要ないのでしょうか?
すごく良い視点だと思います。
前時の授業がスッキリと完結することもあれば、「続きは次の授業でやろう」ということもあるかと思います。
実は「続きは次の授業でやろう」となった場合の方が、次の授業は楽しいものになることが多いです。
そうなのですか!?
それはなぜですか?
今日も一緒に考えていきましょう!
「教材研究を5分で終える」という視点だけは変わりませんよ。
子どもと共につくる算数授業
この記事は以下のような人に向けて書いています。
□ 授業準備をする時間がない
□ 子ども主体の授業をしたい
□ 子どもが楽しいと思える授業をしたい
私は算数の授業方法を専門的に学んだわけではありませんので、あくまで個人的な解決方法を紹介します。
きっと算数を専門にされている先生であれば、もっと他の方法があるかと思いますので、その場合は参考にならないかと思います。
教材研究の時間がない中でも何とか「子ども主体の楽しい授業をする方法」を提案していると考えてください。
また、今回の記事は前回の記事の続編となります。
前時の続きをする
授業では前時の続きをします。
「そんなの当たり前じゃん」と思いますよね。
私が言いたことは、「子どもが前時で出した問いを解決する」ということです。
授業では子どもから様々な「はてな?」や「こんなこともできるかな?」という問いが出てきます。
それらの全てを、45分間の授業で終えることが出来ないこともあるかと思います。
しかし逆に、そういった時はチャンスです。
先生は「じゃあこれは、明日の授業で続きをやろう」と伝えます。
子どもは、自分達が出した問いが授業の内容になるのですから、学習が自分事となりますし、先生が問いを出すよりも楽しいですよね。
例えば、これは前時のおさらいを書いた板書です。
前時では「1m80円のリボンを2.4m買うと代金はいくらになりますか」という問題を解きました。
つまり式は「80×2.4」という整数×小数の計算となります。
子どもは、「0.1mあたりの代金を求めて、そこから2.4mの代金を求める」という方法を考えました。
毎回このやり方だと大変だね。
一発で答えが出せる方法はないのかな?
みんな、どう?
一発で答えを出す方法も思いつきそうかな?
筆算を使ったら出来そうだよ。
なるほど。
じゃあ今日はもう時間がないから、明日の授業で続きをやろう。
明日は「筆算を使って一発で求める方法」を考えてみようね。
子どもの問いが授業のめあてになる
実際の授業ではこのような板書になりました。
左側には先ほどの「前時のおさらい」を書いて、「一発でできる?」という問いが生まれたことを、子どもに思い出してもらいます。
そこから、昨日の続きをしていきます。
新たな問いが生まれる
実際に筆算をしていくと、子どもはこれまでの経験から「整数の時と同じように筆算するだろう」ということは感覚的にわかります。
すると、左側のように「80×2.4」の筆算をした時、子どもからはこんな言葉が出てきます。
なあんだ。小数点を下に下ろすだけでいいね。
え?なんだか…それはダメじゃないかな。
多分それは「整数×小数」の時はいいけれど、「小数×小数」の時は使えないんじゃないかな?
なるほど。では、小数×小数の問題でも試してみますか。
違う問題でも試してみる
上記のようなやり取りを経て、教科書から新しい問題を提示しました。
それが、板書の左側の問題です。
これは「小数×小数」の問題になります。
しかし、この日のめあてとなる「筆算を使って一発で求める」という問いは完全には解決できないまま、授業が終わりました。
続きは明日となります。
ちなみに、右下に子どもの名前の横に「キープ」と板書されています。
これは、明日取り上げたい子どもの考えを、忘れないように板書しています。
その子どもにも「あなたのノートに書いてあることを、明日みんなで考えようね」ということを伝えておきます。
次の日の授業(続き)
それでは、「小数×小数の筆算」を子どもが理解していった流れを説明します。
まずは「式が見えない」という子どもがいました。
それについては、上のような表を書いてくれた子どもがいて、「2.1×2.3の式が見える」ようになりました。
次は筆算の方法です。
子どもは「整数で計算したい」という思いがありますので、「2.1×2.3を10倍の10倍で100倍して、整数に直してから計算する」ということを考えます。
これは過去に学習した「計算のきまり」の学習を生かして考えています。
だから、「計算をしたあとには100でわる」ということがわかります。
つまり、「商の小数点を左に2つ移動させる」ということが理解できるわけです。
これで、子どもが出しためあて(問い)である「筆算を使って一発で答えを求められるかな」ということが解決されたわけです。
子どもが出した問いで授業をつくる
ここまでの授業の流れは、ごくごく当たり前の、どこの学級でもみられる授業だと思います。
大切なことは「子どもの出した問いで授業をつくる」ということだと思います。
「小数×小数の筆算の方法を考える」という授業は、教師側から教科書の問題を提示して進めていくことも出来ますし、それも全然悪くありません。
しかし、授業の問いが「子どもから出されたのか」「先生から提示されたものなのか」ということは、授業の質を大きく変える要因だと考えています。
今回の授業では、子どもが「一発で答えを求めたい」という言葉を発し、そこから他の子どもが「じゃあ筆算でやってみるといいんじゃない」と提案して、ようやく先生は「じゃあ筆算でやってみようか」と言ったわけです。
つまり、子どもは「自分が考えたいことを考えている」という意識で授業に参加します。
子どもは、授業の内容がより自分事として捉えられるのではないかと思います。
終わりに…
今回の授業づくりは「子どもが出した問いを次時の授業のめあてにする」というものでした。
「問い」とは、子どもの「はてな?」や「もっと考えたい」ことなどです。
子どもは、自分の発言から授業がつくられていくと感じれば、自然と意欲が高まります。
この方法を用いるためには、先生は授業づくりを「最低でも単元レベル」で理解しておく必要があります。
本時の授業だけを考えていたのでは、「この子どもの発言は、さらに発展した学習につながりそうだ」という判断ができないはずです。
単元を通して子どもに身につけてほしいこと(見方・考え方)を理解した上で授業に臨めば、子どもの「どの発言」をひろえば授業が深まるのかが見えてきます。
子どもの発言や考えを、各教科の見方・考え方とつなげていくことは、先生の大切な役割だと考えています。
それを繰り返していくうちに、今度は子ども同士で見方・考え方を働かせて授業を進めていくようになります。
最後に、今回紹介した記事も「働き方改革時代の授業づくり」です。
教材研究の時間を短縮するために、「子どもが前時で出した問いを、そのまま次時の授業のめあてにする」ということを紹介しました。
これによって、先生は授業の導入を準備する必要が無くなります。
おさらいをして、サッと問題を解き始めましょう。
あとは、子どもには解決したい問いが既にありますので、「どうやって解決していくか」を、先生も一緒になって考えていくだけです。
きっと楽しい授業になるのではないでしょうか。
この記事が誰かお一人でも、先生のお役に立てれば幸いです。