学級経営をイチから学び直そうと思いました。
動機については、以下の記事に書いています。
とりあえず学級経営に関する本を5冊読んでみる企画。
第5弾はこの本を読んでみました。
いよいよ最後の1冊です。
今は冬休みですので…
これが終わったら、あとは自分の好きな本を、自由に読みあさろうと思っています。
(もちろん、これまでに読んだ5冊も好きな本です。誤解のないように。)
参考・引用文献は以下の通りです。
白松賢(2017)
学級経営の教科書
東洋館出版社
この本との出会い
実は3年前、出版された直後に、私はこの本を購入していました。
すごく素晴らしい本だったので、自分なりにパワーポイントにまとめるなどして、読んでいました。
目から鱗の内容に、感動したことを覚えています。
しかし、今回読み返してみて、反省する点が多くありました。
それは…
「しっかりと読めていなかったな」
ということです。
本に書いてある内容を、理解できていなかったのだということに気がつきました。
今回も完全に理解できたわけではないですが、3年前に読んだ時よりも多くの気づきがありました。
今回の記事でも、私が今後実践していこう、大切にしていこう、と感じたことのみを書いていきます。
全てをまとめたいところですが…
それでは何日もかかってしますので。
この記事は、
「私のアウトプットと記録」
のために書いています。
もしかしたら、読んでいる皆さんのお役には立てないかもしれません。
その時は、すみません。
しかし、私と同じように
「学級経営に悩んでいる先生」
にとっては、きっと示唆に富んだ内容だと思います。
最後まで読んでいただけると、嬉しいです。
学級経営とは何か
学級経営の2つの潮流
白松先生は、学級経営には
「狭義の学級経営」と「広義の学級経営」
がある、とおっしゃっています。
「教師の仕事の中心は教科の授業である」という教育観をもっておられる先生は、「教科の授業」のための学級経営を重視されています。すなわち、学級を整備することで学習指導のために児童生徒をいかにコントロールするできるかが学級経営の技術だと捉えられてきたことを示しています。このような、学級における学習のための秩序をつくること(条件整備)をねらいとした学級経営を、本書では「狭義の学級経営」と捉えます。
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社 p17より引用
一方、教育社会学や教育心理学を中心とした「人間関係づくり」「集団づくり」を包含する学級経営は、「自治」という言葉に代表されるように、児童生徒の学級経営への参画を伝統的に尊重しています。狭義の学級経営がどちらかというと学校や先生の経営技術を尊重していることに対して、こちらの流れは児童生徒の立場を重視し、先生と児童生徒との協働の立場を重視してきたと言えます。この学級経営を「広義の学級経営」と捉え、児童生徒の参画による自律的・自治的な活動を「学級づくり」と本書では定義します。
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社 p17より引用
先生個々による、「学級経営」における認識の違いについて、見事に定義してくださっていると感じました。
「どちらが良い」
というものではなく、
「狭義と広義」
という捉えが、わかりやすいと感じました。
私は、「広義の学級経営」を目指したいという立場です。
特に小学校においては、こちらを重視する先生が多いのではないでしょうか。
学級経営の3領域
白松先生は、本の中で
学級経営には3つの領域があることを示しています。
これが、凄いのです。
「必然的領域」
は、年間を通して、一貫した学級の基盤として存在しています。
また、4月の学級経営では
「計画的領域」
が多いのですが、この領域は日を追うごとに、その割合が小さくなっていきます。
一方で、4月の学級経営では割合の小さかった
「偶発的領域」
は、日を追うごとに、その割合が大きくなっていきます。
つまり、学級経営の初期は、
「学習や生活のきまりごと」を整備することに、力を注ぐ必要があるということです。
そして、学級経営の中期から後期にかけては、
子どもの「自律的・自治的な活動」を目指していくということです。
という風に、私は理解をしました。
(違っていたら、すみません)
一見すると、「当たり前じゃないか」と感じるかもしれません。
しかし、私はそうは思いません。
例えば、私は本来「計画的領域」として指導すべきことを、「必然的領域」の指導事項だと勘違いをして、指導をしてこなかった傾向がありました。
いわゆる「学習規律」などです。
学習規律は計画的領域にあたるものだと、現在は理解できました。
しかし、何となく「規律は不必要なもの」といった間違った考えをもっていたのです(危険ですね)。
それでは、各領域について、もう少し詳しく書いていきます。
学級経営の3領域
必然的領域
必然的領域では
「学級のあたたかさを創る」
そうです。
示唆に富んでいますよね。
「なめられてはいけない」ではなく「指導すべきは指導する」
毅然とした態度での指導は、「怖さ」を基盤に指導をすることではありません。ましてや、児童生徒を脅すような言動は慎むべきでしょう。
〜中略〜
重要なことは、次の二点です。第一に、「自己と他者の心と体」を傷つけうる言動・行動についての指導の必要性を予見するということと、第二に、指導の場面を見逃さない(オンタイムの指導を徹底する)ということです。
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社 p37-39
これは非常にわかりやすいです。
つまり
「生命や人権に関する指導は徹底する」
ということだと考えました。
また、この指導については、
「見逃さない」
ということです。
年間を通して、「毅然とした態度で指導を徹底するのはこの一点」だと考えると、学級経営もやりやすくなるのではないかと感じます。
指導の「ゆがみ」と「ゆるみ」に気をつける
白松先生は、
「子どもに信頼されやすい先生と、そうでない先生の違い」
が、必然的領域の中にあるとおっしゃっています。
次のような2つの問題と関わっているようです。
一つは「指導のゆがみ」です。これは、同じことをした子どもたちに対し、学校の中である先生は指導をしているが、ある先生は指導をしていない、という状態です。すなわち、「人によって指導がゆがんでいる状態」を示します。
いま一つは「指導のゆるみ」です。こちらは、同じ先生でも日によって指導が異なっている状態です。先生の気分によって指導の厳しさが変わったり、感情的に怒る先生を想像するとわかりやすいでしょう。すなわち、同じ先生でも「日によって指導が厳しくなったりゆるくなったりする状態」を示します。
なぜ、このような「ゆがみ」や「ゆるみ」が生じるのでしょうか。
一つには、厳しく力で指導する内容が多いほど、「ゆがみ」や「ゆるみ」が生じやすくなるためです。
〜中略〜
いま一つには、必然的領域の指導の重点化が学校で共有されていないと、「ゆがみ」が生じやすくなります。
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社 p40-41
先ほども述べましたが、
厳しく指導する内容は、1つに絞った方が賢明
だということですね。
そのほうが、「ゆがみ」や「ゆるみ」は起こりにくいと思います。
確かに、日によって指導の強さが違うことって、身に覚えがありませんか?
私はあります。
あれも、これも、厳しく完璧に指導しようとすると、先生の対応に差が出るのは当然だと思います。
気をつけたいと思いました。
計画的領域
計画的領域では
「できることを増やす」
そうです。
こういった学校や学級生活の「きまりごと」を調整し、浸透させ、学校や学級において、児童生徒が生活を過ごしやすくするための指導を行うのが、学級経営の計画的領域です。
〜中略〜
言うまでもなく、私にとっての「当たり前」とあなたにとっての「当たり前」は異なります。だからこそ、社会(人と人との関係)においては、様々な人の合意の上で、「きまりごと」が成り立ちます。そのためきまりごとは、人によって、時代によって異なり、時に話し合って合意・改善するプロセスが必要になります。
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社 p58-59
また、本の中では以下のように、まとめられています。
「きまりごと」の日常化
○ 固定的な「ルール」「規律」ではなく、合意に基づく「きまりごと」に
○ ルールと罰則・排除をセットにしない
○ 大切にすることで学校生活が心地よくなるように
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社 p60より抜粋
決まりごとは、
「誰のためにあるのか」
ということを、忘れないようにしたい、と感じました。
子どもが「きまりごと」に対して納得していないのであれば、結局はその場しのぎの「規律」となります。
つまり、
「子どもには何の力も育たない」
ことになります。
自戒を込めて書きました。
気をつけていきたいですね。
また、計画的領域における指導の3つのコツも書いていました。
計画的領域における指導の3つのコツ
1 キー(鍵)となるきまりごとを軸にする
2 手順の見える化
3 クラスの「心地よさ」を大事にする
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社 p75-79より抜粋
キー(鍵)となるきまりごととは、自分にとって一番重要なこと、だそうです。
例えば、本の中では
「必ず全員が静かになってから話すことを徹底しています」
などが挙げられていました。
クラスの心地よさ、というのは、
「こうした方が心地よい」という信念体系に基づく指導だそうです。
偶発的領域
偶発的領域では
「ともに学級を創る」
そうです。
必然的領域や計画的領域の指導を通じて子どもたちとの信頼関係を深め、偶発的領域として自主的・実践的な活動を大切にしている学級では、いい意味での偶発的な出来事が起こります。
〜中略〜
ディズニーランドでは、アルバイトのキャスト(従業員)が多いのですが、それでも多くのリピーターを生み出しています。その理由の一つが、福島によると、キャストのホスピタリティ(主体的な思いやり)を創造的に発揮できる環境づくりでしょう。
〜中略〜
重要なことは、「マニュアルと管理」では、「顧客の感動」を得ることができない、という視点です。
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社 p90-91
3つの領域を適切に実践している学級では、
ホスピタリティ(主体的な思いやり)が生まれやすい
ということですね。
素敵ですね。
サプライズの誕生日会や、様々なお祝いなども、これに含まれるのでしょうか。
日常的な場面でも、子どもたちの、ホスピタリティあふれる言動が見えるようになるのかもしれません。
そう考えると、ワクワクしますね。
そんな学級づくりを目指したいと思います。
本の中で、白松先生は、いわゆる
「学級会や学級活動の問題」
についても触れています。
学級会や学級活動は、学級生活における「問題解決」ですよね。
NGな学級会として、2つの問題を示しています。
○ 特定の子どもを集団批判するような話合い活動
○ 教師の感じる問題を児童生徒に押しつける話合い活動
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社 p98より抜粋
例えば、本に挙げられていた例として…
「掃除の時間に遊んでいるいるため目標が達成できない」
ことを議題にしてしまうと、
「掃除時間にいつも遊んでいる、A君とB君を集団批判する話合い活動」
となり、個人攻撃で終わる危険性があることを指摘しています。
また、
「言葉のよりよい使い方」
という議題で話し合った場合、
「先生がこう言って欲しい、ということを予見する話合い活動」
となる可能性がある、という指摘です。
それよりも、文化創造に向けて、例えば「学級のみんなで楽しめるようなイベントをしたい」「運動会を運動の苦手な人も楽しめるようにするには」といった「快の予感」を共有できる内容を題材にすると良いでしょう。〜中略〜
すなわち、文化創造と問題解決はセットとして、自治的活動を構成していく必要があるのです。文化創造の充実感を感じることで、次の活動へのモチベーションが生まれ、学級の文化をよりよくするコミュニティが成熟していくことになります。
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社 p100
「快の予感」を共有できる内容を題材にする
この言葉には、この本を初めて読んだ3年前にも、頭を打たれたような気持ちになったことを覚えています。
自律に向かう指導
白松先生は、「きまりごと」を指導する際に、それが
「できた方が本人・学級にとっていいこと」
「しなければならないこと・許されないこと」
なのかを、切り分けて考えた方がいいとおっしゃっています。
指導には、すぐに改善を求める「クイック」な指導と、長期的な視点で変化を生み出すための「ロング」な指導があります。「クイック」にすることは、他者を傷つけうる言動・行動を制止し、落ち着かせ、その後、感情的になった時の「言動・行動」の変えるべきところを見つけさせます。
〜中略〜
大切なことは、「しなければならないこと」について、「何だったらがんばればできるか」を指導・援助することです。その意味では「クイック」な指導を繰り返しながら、長期的にみると変容につながる一つ一つの指導を積み重ね、「ロング」な指導として「しなければならないこと」ができるようにすることを意識する必要があります。「ロング」な指導とは、未来志向で「クイック」な指導を繰り返しながら、長期的なスパンで児童生徒の変容を捉えていく指導のあり方です。
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社 p145-146
私を含め、先生は
「指導の成果を、子どもに対してすぐに求める」
ことはないでしょうか。
私は、あります(反省)。
こうした意識を変えていくためにも、指導における、「クイック」と「ロング」の捉えは重要だと感じました。
特に、「指導・援助」していく、という姿勢を忘れないようにしたいです。
「子どもの変容」を生む指導の難しさとやりがい
この本の中で、私が個人的にすごく勇気づけられた文章を、紹介したいと思います。
というのも、近年のエビデンス(成果の科学的根拠)至上主義で、「短期的な成果」が常に求められますが、「生き方あり方の教育」とは、そんなに単純なものではないことを強調したいためです。一方で、人が劇的に変わる瞬間も確かにあります。大切なことは、「はかなく、かすかで、無駄かもしれないこと」を、一つ一つ熟慮して私たち(教育者)は子どもに提供するしかないということです。その一歩一歩を積み重ねた指導や働きかけの蓄積によって、相手が受け入れてくれた時に、「変容」が生じることになります。
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社 p141
私たち、先生がやっていることは、非常に難しいことなのです。
そして、教育とは単純なものでもないのです。
子どもを「変える」ということは、どんなに難しいことなのか、ということを考えさせられた言葉でした。
この文章を読んだ時、
「単純ではないことを仕事にしているのだ、がんばろう」
という気持ちと、
「小さなことをコツコツと、誠実に子どもにしていこう」
という決意が生まれました。
終わりに
これで、学級経営に関する本を5冊読む、という私の企画は終了です。
元々は、学級経営について悩んでいたので、原点に帰るつもりで、今までに読んだ本を読み返そう、という気持ちでした。
どうせなら、ブログでアウトプットしておくと、いつでも振り返ることができるし、もしかしたら誰かの役にたつかもしれない…という思いでした。
やってよかったな、と思っています。
こうして学んだことを、冬休み明けの実践に生かしたいと思います。
少しでも学級経営が良くなって、子どもが幸せになれるといいな。
私が今回記事にした5冊の本は、どれも名著ですので、ぜひ実際に手にとって読んでみてくださいね。
最後に、今回も大きな気づきと学びを与えてくださった、白松先生と、その著書に感謝いたします。
ありがとうございました。