日々の実践

幼児期の学びを小学校につなげる

新米先生

幼稚園や保育園での生活って、子どもにとってはとても楽しかったようです。

小学校でも「もっと遊びたい」という子どもの声が聞こえますが、どのように考えていけばいいのでしょうか…。

ぽん太先生

それは、すごく大切な視点ですよ。

小学校でも幼児期の教育のように、もっと遊ぶことを考えればいいと思います。

新米先生

え!?だって小学校では勉強をしなくてはいけないし、授業があるので、遊ぶ時間ばかり作るわけにはいきませんよね?

ぽん太先生

「遊びとは何か?」を考えることが大切です。

小学校でも「授業で遊ぶ」ことができますよ。

新米先生

興味があります!

ぽん太先生

今日も一緒に考えていきましょう。

幼児期の学びを小学校につなげる

幼児期の教育は、子どもの資質・能力を「遊びを通して育む」ということだと思います。

私は幼児期の教育の専門家ではないので、もし違っていたらすみません。

私は小学校の先生として、幼児期の教育から学んだことを、小学校の授業に生かしていきたいと考えていますので、そういった視点で考えたことを紹介したいと思います。

遊びとは何か

そもそも、「遊びとは何か」ということについて、私の考えを書きます。

私が考える「遊び」とは以下のようなイメージです。

□ 没頭する

□ 探求する

□ 楽しい

ですから、小学校の授業でもこうした遊びを授業の中に取り入れていけばいいと思います。

授業での遊び

小学校でいう「遊び」とは幼児期の遊びとは内容が異なるかと思います。

小学校での遊びとは、以下のようなものだと考えています。

□ 対話する

□ 実際に調べる

□ 試してみる

□ お友だちと話す

□ 作ってみる

□ 考えを交流する

他にもあるでしょうが、大切なことは子どもが「楽しい」という気持ちを持ちながら「やりたい」と思ったことを「探究する」活動を仕組むということです。

単元構想を考える

授業で遊ぶ方法は様々ありますが、まずは「単元の導入2〜3時間を遊びの時間と考える」という方法が取り組みやすいかと思います。

そのために、授業は「1時間レベル」で考えるのではなく、「単元レベル」で考えます。

つまり単元構想の捉えを少し工夫してみます。

例えば全10時間の単元であれば…

導入2〜3時間:遊びの時間

中5〜6時間:子どもから出された問いの解決

終末2時間:学習のまとめや習熟問題

ますはこのような感じの単元構想だと取り組みやすいかと思います。

授業の実際(算数)

これは、5年生算数「平均」の導入の様子です。

学級だよりから抜粋しました。

平均の学習では「ならす」という考え方をしますが、それをブロックを使った活動にしました。

学校には、このような1㎤の立方体が大量にあるのではないでしょうか。

これを実際に、子ども一人一人に30個程度渡します。

それを使って、色々と遊んでみるということです。

先生が「遊んでみよう」と言わなくても、子どもは自然と「楽しいこと」「やってみたいこと」を見つけます。

学級だよりの左側の写真のように、「ピラミッドのような形でもならすことができるのか?」という遊びを考えた子どもがいました。

子どもからは「ブロックの数によっては、ならせないものもある」という言葉が出てきます。

つまり、「割り切れないものは、ならせない」のです。

また、「これはブロックだからできないけれど、数字なら小数にして、ならすことができるよ」という声も聞こえてきます。

つまりもう、「平均=全体÷個数」というきまりが見え始めているわけです。

算数の見方・考え方を働かせていると言えるのではないでしょうか。

こうして遊んでいるうちに、子どもから様々な問い(はてな?やってみたい)が出てきますので、それを単元の中盤で扱っていくということです。

教科書の内容や、この単元で身につけたい見方・考え方とうまく関わるように、先生が子どもの問いをつないでいくことになります。

授業の実際(国語)

5年生国語「見立てる」という説明文の授業の導入です。

教材文を全員で読んだ後は、自由な時間(遊びの時間)としました。

先生は「どんなことを勉強していきたいかな?」「何か面白い発見はあるといいね」と言って、自由に教科書を読んだり、お友だちと話をしたりする時間をとります。

その時の板書です。

子ども

「〜である」という言い方は、なんだか気づかないうちに「筆者に操られている」ような気がするよ。

子ども

「しかし」という言葉は「意外性」を表している感じがするね。

子ども

30種類「にもなる」と言われると、「すごく多く」感じるね。

子ども

この文章は筆者の言葉の使い方が面白いね。

こんな風に、もっと「言葉のひみつ」を調べてみたい!

これで、次時の授業の問いとなる「言葉のひみつを見つけよう」が立ち上がりました。

筆者の言葉の使い方に注目することによって、子どもは言葉の持つ意味や働きについて、理解を深めることができます。

授業の実際(社会)

5年生社会「米づくり」の授業です。

前時で子ども達は、「米づくりの仕事は大体わかるよ」と言っていました。

そこで私から、「じゃあ次の授業では、米づくりの仕事を実際に見たり、順番よく並べかえたりできるかな?」と聞いてみました。

こんなことでも、何となくミッションやクイズ的な要素があり、子どもはワクワクします。

すぐに「できるよ!」「余裕だよ!」と言っていました。

以下は授業の板書です。

ちなみに、板書は子どもが書いています。

(おいしいお米にするための工夫、肥料・農薬、という言葉だけは私が書きました)

米づくりの写真を掲示すると、その内容(田おこし等)や、順番を並べ替えることはすぐに出来ました。

すると子どもから、「この写真には肥料をあげるところがないよ。肥料はいつあげるの?」という発言がありました。

これで、今日の遊び(探究したいこと)が見つかりました。

子ども達は「え?肥料は最初だけじゃないの?」「いやいや、何回もあげるでしょ」といった声が聞こえます。

そこからは、資料集、教科書、インターネットなどを活用した調べ学習が始まりました。

子ども

教科書に「カモを水田にはなす」と書いているよ。カモのふんが肥料になるみたい。

子ども

うちのおじいちゃんも畑に牛のふんを入れているよ。

無農薬で体にもいいらしいよ。

子ども

玄米黒酢とかも入れるみたい。なんでかなぁ?

子ども

お酢には、虫除けの効果があるって聞いたことがあるよ。

この後も議論は続き、子ども達は「いつ肥料をあげるのか」という問いに関連して、「水の量の調節」「大量の水をどこから手に入れるのか」ということについても、学んでいきました。

一つの問いから、学びがどんどん広がり、深まっていくのです。

最終的にこの時間で子ども達は、「おいしいお米を作るには“自然・動物・人に良いもの”を使う」という答えにたどり着きました。

これは教科書を読んだり、先生が教えたりすればいいことかもしれませんが、子どもが「自分で調べ、考え、議論しながら理解した」という点において、学びの質は全く異なると思います。

終わりに…

「幼児期の学びを小学校につなげる」という大それたタイトルをつけましたが、端的に言うと「授業にも遊びの要素を取り入れる」ということです。

子ども発信の問いを大切にし、子どもが没頭できる時間、探求できる時間を積極的につくるということです。

そういった時間を子どもは楽しいと感じるのではないでしょうか。

楽しい時間は、つまり遊びの時間なのだと考えています。

こういった授業を成立させるために大切な先生の役割を、私なりに考えてみました。

□ 遊びの“もと”を準備する(具体物や教科書の写真など)

□ 子どもの話をさえぎらずに、ゆったりと聴く

□ 子どもの発言をつなげて、学びを深めていく

□ 子どもと一緒に驚き、楽しみ、面白がる

この記事が誰かお一人でも、先生のお役に立てたら幸いです。