学級が荒れる過程には、様々な要因が絡み合っている場合が多く、一概に「これをやれば絶対に大丈夫」という方法はありません。
しかし、荒れを防ぐために「必ずやった方がいいこと」は存在しています。
学級が荒れることを考えると…いつも年度当初は怖いです。学級が荒れない方法ってあるのですか?
学級の荒れは、ベテランでも若手でも起こりえることです。この問題は複雑で、「絶対に荒れない方法」はありません。しかし、効果絶大な「荒れを防ぐための方法」はあります!
効果絶大!?ぜひ知りたいです。
それは、子ども達の「共感的で受容的な、やわらかい雰囲気を育てること」です。毎日5分の実践で、効果が出ますよ。これから詳しく説明しますね。
学級の荒れを防ぐために、先生が心がけることは他にもあります。
先生の技(教育技術)も知りたい方は
【子どもから信頼される技】をお読みください。
学級の荒れを防ぐために必ずやること
今回の記事で紹介する「技」を身につけるのは誰か?
それは子ども達です。
その技とは「共感的で受容的な、やわらかい雰囲気をつくる技」です。
その技を身につけた時の心地良さは、もうたまりません。
子ども達の笑顔があふれ、学級に幸せな雰囲気が広がります。
荒れとは程遠い学級の姿へと変身します。
やることは
5分間の対話タイムです。
5分間の対話タイム
この手法は、岩瀬直樹先生の著書を参考にしています。
岩瀬直樹先生は、ファシリテーションスキルなどで、著名な先生です。
私も、岩瀬先生の本にはかなりお世話になっています。
岩瀬直樹,ちょんせいこ(2011)『よくわかる学級ファシリテーション②―子どもホワイトボード・ミーティング編― (信頼ベースのクラスをつくる) 』解放出版社
この本を読んで学んだことを、自分なりに実践に落とし込んでやっています。
岩瀬直樹先生の著書はかなりたくさんあるので、複数の書籍のエッセンスが合わさっているかもしれません。
この本の中で紹介されているのは、
「ペア(サークル)対話」という方法です。
文字通り、子ども達がグループ(4〜5名)で、円になって座り、話をする。それだけです。
書籍では、はじめはペア対話から始めるように書いていますが、本記事の趣旨から考えると、サークル対話だと思いましたので、そちらを紹介します。
5分間対話タイムの流れ
⑴ グループで円(サークル)になって座る
⑵ 1人1分ずつ、お題に合わせて話をする
⑶ タイマーで時間を計り、1分経ったら先生が「はい、交代です」と伝え、次の子が1分話す
⑷ これを繰り返す(5人グループなら5回)
⑸ 5分で終わり(4人グループの場合は「5回目は話し足りなかった人が話していいですよ」と伝えます
これだけですが、当然いくつかのポイントがあります。
つまり、先生が指導するべきことがあります。
これから紹介する「ポイント」を、子ども達にしっかりと指導することが大切です。忘れないでくださいね。
この活動は「聞き方」の練習だということを伝える
この活動は、「1分間話す」という、話す力を育てる活動ではありません。
聞き方の練習なのです。
ですから、誰かが話している途中で「あ!私もそれ知ってる。私の場合はね…」などと言って、
お話泥棒をしてはいけません(笑)。
1分間、しっかりと相手の話を聞きます。
聞き手は、目をキラキラさせて、「キラキラ光線」「キラキラビーム」を出しながら聞く
「あなたのお話に興味があるよ」「しっかり聞いているよ」というメッセージを、表情や雰囲気で出すように伝えます。
「キラキラ〜✨ってしながら、お話を聞いてもらえると嬉しいよね」ということを伝え、先生が実際にやって見せると効果的です。
聞き手は、「オープンクエスチョン」で質問する
オープンクエスチョンについては、岩瀬先生の本にも詳しく書いてありますので、読んでみてください。
つまり、
相手の話をさらに深掘りするような質問です。
「もう少し詳しく教えて」「どんな感じ?」「他にもある?」などですね。
相手に、もっと詳しく話してもらうことを意識すると、いろいろな質問が浮かぶはずです。
逆に、「YES or NO」で答えられるような質問は、「クローズドクエスチョン」と言って、話題を深めません。
聞き手は、「あいづち」をうつことが大切
実は「あいづち」が、ものすごく大切です。
これは、実際にやってみて感じていることです。
「あぁ〜」「わかるわかる」「なるほど」「だよねぇ」などです。
あいづちの例も、岩瀬先生の本に詳しく書いてあります。本当に岩瀬先生の本は良書です。
お題は何がいいの?
対話タイムのお題は、初期は軽いものから始めた方がいいです。
「最近悩んでいること」などは、受容的な雰囲気がかなり育っている学級でないと、逆効果になる場合があります。
勇気を出して辛い事を話したのに、「ふぅ〜ん」とか、「そうなんだ」みたいな雰囲気が少しでも出ると、話した子は嫌な思いをします。
つまり、逆に雰囲気が悪くなります。
1人1分の持ち時間なので、基本的には「軽いこと」「楽しいこと」を話す、というスタンスがいいと思います。
【初期に取り組むお題】
○ 自分の好きな事
(食べ物、スポーツ、遊び、芸能人…なんでも)
【少し慣れてきたら】
○ 最近、うれしかったこと
○ 最近、ハマっていること
【十分に慣れてきたら】
○ 週末のこと
○ 最近の出来事
○ 聞いて欲しいこと
いつやるの?
私は毎年、朝の会でやっています。
毎日やっていた年もありますが、朝の会のメニューは、学校の実態によって様々だと思います。
ですから、全校集会や学習タイムなどが設定されていない日で、やればいいと思います。
週に2回以上やることをオススメします。
もし朝の時間がとれないのであれば、授業の開始5分でもいいと思います。
対話型の授業を計画している時間であれば、ウォーミングアップとして取り入れてもいいと思います。
週に2回5分間、授業の時間を利用してやるほどの価値は、十分にあります。
なんとか時間を見つけて、ぜひ取り組んでみてください。
効果をさらに高めるには?
対話タイムの様子を録画して共有する
これは効果絶大です。
子ども達が対話タイムをしている様子を、iPadなどで録画して、その場ですぐにテレビに映して見せましょう。
この効果は大きいです。
子どもは、意外と自分の姿が見えていません。
メタ認知はまだ未熟なのです。
ですから
「できているつもり」「やっているつもり」に陥ることが多いです。
録画したものを実際に見ることによって、
「あれ?私って、思ったほどキラキラしていないな」
「○○さんは、笑顔でキラキラしているな」
「なるほど、ああいう風に聞けばいいのか」
ということに気づきます。
これも大切なポイントです。
先生は
「見て見て。このグループすごくキラキラ光線出ているね」
「笑顔が素敵だね」
「これだと話している人も嬉しいね」という、
プラスのコメントのみを言います。
子ども達からは、
「私はあまりキラキラしていなかった」みたいなコメントが出るかもしれません。
そんな時は「知らないふり」をしましょう。
「あれ?そうだった?先生はいいなと思ったけど」
「まだ始めたばかりだからね。みんな意識が高いんだね」と言って、スルーしましょう。
先生は「素敵な場面を撮るためにしか録画はしない」というスタンスは、年間を通して持っておいたほうがいいです。
そうしないと、写真嫌い、動画嫌いの子を生みます。
あまりにも直接的なダメ出しは、個人的には「教育的手法」とは思えません。
子どもは自分の「弱さ」「改善すべきところ」に、きちんと自分で気づき、成長することができます。
「動画を見る」というきっかけによって、もし自分で気づけた子がいたら、むしろ褒めましょう。
「先生は気がつかなかったけれど、自分ではそう思ったんだね。自分に厳しいなぁ、すごいね」といった感じです。
様々な場面で意識することを促す
「キラキラと相手の話を聞く」「あいづちをうつ」といったことを、授業や様々な教育活動の場でも、意識できるよう促します。
授業の場面で、
「これからグループで話してもらうけれど、キラキラ光線を出しながら聞こうね」
「○○さんがキラキラ光線を出していて、素敵だった」
ということを積極的に伝え、日常化していきます。
終わりに
子ども達に「共感的で受容的な、やわらかい雰囲気をつくる態度」が身につくと、よほどの事がない限り、学級は荒れません。
もちろん先生も、そういった行動を意識します。
子どもに言ってばかりで、自分の行動が伴っていなければ、逆に子どもからの信頼を失います。
5分間の対話タイムを、私はもう10年近く続けています。
対話タイムは、どの子も例外なく好きになってくれたと思います。
この活動は「聞き方の練習」だとお伝えしました。
しかし、話し手にも大きな効果があります。
これも、実は子どもにとっては嬉しい事なのです。
しかも、キラキラした顔で、「うんうん」とうなずきながら、受容的に聞いてもらえるのです。
この時間を嫌いになるはずがありません。
子ども達には、共感的・受容的に話を聞いてもらえることの心地良さを、ぜひ小学生のうちに体感して欲しいです。
伝え方・聞き方といったスキルは、十分に指導可能です。
こうしたスキルは教師の説話ではなく、体験的に身につけていく必要があります。
ぜひ練習の時間を、意図的に仕組んでいきましょう。