日々の実践

教材研究が5分で終わる算数授業〜働き方改革時代の授業づくり〜

新米先生

算数の授業って毎日あるので、しっかり教材研究をしないと、つまらない授業になってしまい、算数嫌いな子を増やしてしまいそうです…。

ぽん太先生

そうですよね。

毎日やる算数の授業がつまらないと、子どもも楽しくないですよね。学級経営にも影響してきそうです。

新米先生

学級経営にも影響…!?怖すぎます。

でも、学校現場の多忙化は止まりませんし、教材研究をする時間をつくるのもやっと、という先生も多いと思います。

ぽん太先生

「教材研究」の捉え方を少し変えてみてはどうかな?と思っています。

「教材研究」が「45分間の授業の流れを考える」とか「教具を準備する」といった時間にも使われているのだとしたら、大変だと思います。

新米先生

教材研究では本時の流れをイメージしておくことは必須じゃないですか?

ぽん太先生

これから実際の授業をもとに説明していきますよ!

日々の授業準備が5分で終わる方法を紹介します。

新米先生

授業準備が5分!?知りたいです!!

ぽん太先生

今日も一緒に考えていきましょう。

授業準備を5分で終わらせる方法

この記事は以下のような人に向けて書いています。

□ 授業準備をする時間がない

□ 子ども主体の授業をしたい

□ 子どもが楽しいと思える授業をしたい

私は算数の授業方法を専門的に学んだわけではありませんので、あくまで個人的な解決方法を紹介します。

きっと算数を専門にされている先生であれば、もっと他の方法があるかと思いますので、その場合は参考にならないかと思います。

教材研究の時間がない中でも何とか「子ども主体の楽しい授業をする方法」を提案していると考えてください。

ズバリお伝えすると、算数の授業は「導入ではシンプルに教科書の問題を黒板に書く」ということです。

この方法は同じ学校で勤めている算数部のM先生に教えていただきました。

導入では「不完全な状態の教材を示して、子どもの違和感を誘発し解きたいという意欲につなげる」とか、「凝った教具を準備して子どもの興味を惹きつける」といった手法も用いられるかと思います。

しかし、こういった導入や仕掛けをするためには、教材研究・準備に多大な時間を要します。

もちろん、時間を費やせる方はどんどん研究を深めていけばいいと思います。

今回紹介する方法は、授業開始前に「今日の授業で扱う教科書の問題を確認するだけ」となります。

もう少し詳しくいうと、「今日の授業で子どもは何ができるようになればいいのか」ということも、一言で押さえて頭に入れておきます。

シンプルな導入で授業をつくる

導入に時間をかけず、シンプルに教科書の問題を提示することで、単純に子どもが活動する時間が増えます。

その後、どのように授業を進めていくのか考えていきます。

教科書の問題を板書する

これは

授業全体の板書です。

授業開始と同時に、私は黙って教科書の問題を板書します。

半分くらい板書したところで…

ぽん太先生

ここまで書けた人?

子ども

もう書けたよ。

ぽん太先生

すごいなぁ。速く書けている人が5人もいる。やる気があるんだね。じゃあ、続きを書くね。

ラスト1行を残したところで…

ぽん太先生

ここまで書けた人?

ここで、おそらく書けた人数が増えています。

ぽん太先生

すごい!10名に増えてる!やる気がある人はすぐに追いついてくるね。速いだけじゃなくて、丁寧に書いているかな…。いいね!きれいな字だね。

ここで、先生が机間を回りながら子どもの様子を見ていると、必ず「もう書き終わった!」という子が出てきます。

なぜなら、私は「問題文を最後まで読み上げたけれど、黒板にはまだ数文字書いていない」という状況だったからです。

しっかりと聞いている子達は、私が板書していなくても書き終えることができます。

ぽん太先生

えぇ!?先生よりも速く書けたの?すごいなぁ。

よし!じゃあ先生も続きを書こうかな。

子ども

先生、問題を読み上げていたもん。書けるよ。

…なんていうことを子どもは言うはずですが、先生に勝てたことで表情は嬉しそうです。

こんなやり取りをしながら、全員が書き終えることができるように時間の調整をしていきます。

これは超初歩的な技ですが、一応紹介しました。

なぜか毎回使えるので面白いです。

3分〜5分の自力解決

問題を板書した後は、「じゃあ解いてみよう」と言って、ここもシンプルに一人一人で解く時間。

いわゆる「自力解決」の時間です。

ですが、「自力解決」の時間は3分〜5分で終わります。

全員が解いていなくても終わります。

なぜなら、「自力解決の時間」は私の授業では「本時の問いが生まれるまで待つ時間」だからです。

だいたい3分から5分で「本時の問い」を発する子どもが出てきます。

問題を解き始めたら、子どもは様々なことをつぶやき始めます。

子ども

3.2㎡と5.76dLかぁ。どちらも小数だから難しそうだな。

ぽん太先生

おっ。確かにそうだね。よく気がついたね。

子ども

でもさ、1㎡を求めるっていうことは、なんだか前に勉強した「平均」と似ている気がするよ。

ぽん太先生

面白いなぁ。前に勉強したことと、つながって見えるんだね。

このあたりではまだ、「本時の問い」になりそうなことは生まれていません。

最初のうちは、「ある子どもが困っていることを解決する」という授業スタイルの方が授業づくりがしやすいと思います。

ある子どもの「困った」「わからない」を「本時の問い(めあて)(解決したいこと)」にする

こうした姿勢を授業の基本にしておくと、学級に「仲間の困り感に寄り添える風土」が育まれます。

本時の問いが生まれる

この授業では「今の単元は小数のわり算を勉強している」ということを子どもは知っていますし、直感的に「小数÷小数の問題だ」と気づく子がほとんどです。

そこで普通に「式は5.76÷3.2で…」という流れになっていきます。

ここで困っている子が言葉を発します。

子ども

え?なんで小数÷小数なの?

ここで、本時の問いが1つ生まれました。

前時では「整数÷小数」の学習をしています。

「小数÷小数」を扱うのは本時が初めてですが、直感的に理解できる子もいれば、塾などで先行学習をしていて、「知っているような気がしている」子がほとんどです。

すでに「知っているような気がしている子」も、言葉や図を使って説明をする活動を通して、もっと理解を深めることができます。

「あれ?説明するのは難しいなぁ」と言って、よく理解していない自分に気づく子が必ずいます(笑)。

このように、2段の数直線を使って、図で説明してくれる子が出てきます。

さらに、右の式のようにして説明する子もいます。

「計算の約束を使ってどちらも整数にしたら、小数÷小数をしようと思うんじゃない?」と言っていました。

こんな感じで、整数にしていきました。

この辺りまでくると、「あぁ、わかった。小数÷小数だね」と言って、困っていた子も納得します。

実はこの問いと同時に、「なぜこの式(5.76÷3.2)になるの?」という問いも生まれていましたが、これも上記の説明で解決してしまいました。

次々に生まれる問いを解決していく

問いは45分間の授業の中で一つではなく、次々と生まれます。

次はこれまでの学習でもやってきたように「筆算のやり方はどうするのだろう」という問いが出てきます。

前時の授業で「わる数を10倍や100倍にして、整数にしてから計算する」ことは知っています。

しかし、「じゃあ、わられる数は小数のままでもいいのか?」といった問いが出てきました。

子どもは「わられる数は小数でも、普通に筆算すればいいじゃん」とか「わる数が小数だと、計算がやりづらいんだよ」といったことを議論し始めます。

こういった対話や活動を通して、子どもは「なんとなく理解していること」が「実感を伴って理解している」という状態になるのではないかと考えています。

ここまでの授業で、子どもは自由に教室の中を動き回って、個々のペースとやり方で問題の解決を進めていきます。

お互いに相談したり、教え合ったりなど、大歓迎です。

全体で確認をしたい時だけ、「みんなで確認したいことがあるから、その場で黒板に注目してください」と言って、全体交流をします。

先生は「今日の授業でできるようになってほしいこと」に関わる子どもの発言を自然な形でつなげて、子どもに板書や説明をしてもらいます。

面白いな、と感じたことは取り上げて全体で共有します。

この日も実は、ものすごい方法を考え出した子がいて、教室の一部はその話題で盛り上がっていました。

「他の問題でも使えるのかな?」「いや、これは今回だけしか無理じゃないかな」と言って、いわゆる「算数好き」な子たちが盛り上がっていました。

(上の板書の左下の方に小さく書かれている方法です)

授業づくりの前提となること

こうした授業づくりをしていく際、前提となることがあり、それは年度当初に子どもと確認しておきます。

□ 「わからない」「困った」は宝物であるということ

(間違えたら恥ずかしいという考えは、この教室では無くしていこうと伝えます)

□ 人に「教える」という学習方法が、1番頭に残るということ

(アメリカ国立訓練研究所が発表したラーニングピラミッドを参考にしています)

□ 子どもから問いが出てこなければ、授業は前に進まないということ

(先生は基本的に進めません、教えません、ということを伝えます)

そして、子どもには伝えなくてもいいのですが、先生の仕事として大切なことが3つあります。

□ 子どもの話を決してさえぎらずに、ゆったりと聴く

□ 子どもの考えを面白がったり、驚いたりして、共に楽しむ

□ 子どもの発言をつないで「今日の授業のめあて」に向かっていく

こういったことを大切にしながら授業をライブでつくっていくことは、正直簡単ではないと思っています。

しかし、子どもは自分の発言によって授業が進められていくので、楽しくて仕方がありません

そして、先生も楽しそうに驚いたり、一緒に考えたりしてくれるわけです。

先生自身も、「今日の授業では子どもがどんな問いを出してくれるのだろう」「どんな素敵な姿を見せてくれるのだろう」と、期待でワクワクするはずです。

こうした、授業づくりで大切にしたいことは実はまだまだたくさんあり、他の教科でも汎用的に使える先生の技や心構えがあります。

今後の記事でも少しずつ紹介していけたらと思います。

働き方改革時代の授業づくり

今回は「働き方改革時代の授業づくり」という意識で記事を書きました。

つまり「教材研究の時間を短縮する」という視点です。

自作教材を開発したり、深い教材研究をしたりして、子どもが熱中する授業をつくる経験も当然貴重だと思います。

しかし、日々の授業でそれをすることは、ほとんどの先生にとって至難の業ではないでしょうか。

そこで、誰でもすぐに取り組める「教科書を使った授業」を提案したいと考えました。

教科書からシンプルに問題を提示して、「困ったことない?」「難しいなと思うことを教えて」「今日考えてみたいことはある?」「何か気づいたことは?」という質問をしながら、本時のめあて(問い)を立てて、それを全員で解決していくだけです。

もし興味を持っていただけたなら、試していただけると幸いです。