「幸せな学級」とは何でしょうか。
それはズバリ
「自治的な学級」です。
上越教育大学教職大学院教授・赤坂真二先生の著書に、こんな言葉が書いてありました。
「幸福感は、自分の能力を発揮して他者に貢献することで得られる」
「子どもたちの幸福感の高い集団の姿は、自治的集団である」
赤坂真二(2016)「スペシャリスト直伝!成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意」明治図書
つまり、
「子ども達が、自分の力でよりよい学級をつくっていける集団」です。
また、幸福感のキーワードは「他者貢献」や「自己有用感(誰かの役に立っている自分)」と、言えるかと思います。
私の学級では、実際に何をすればいいのですか?
問いが生まれましたね。一緒に考えていきましょう。
私の中で、何か「問い」が生まれた時、意識していることがあります。
というわけで、「幸せな学級づくり」のための、明確な手立てを考えていきたいと思います。
学級活動⑴「集会活動」に取り組もう
今回の記事では、
学級活動⑴の「学級における集会活動」を通して、「幸せな学級づくり」を実践する方法を紹介します。
たくさんの実践がある中の一例ですので、「この方法が一番」とかを考えるものではありません。
「幸せな学級づくりの方法」は、きっと100通りくらいあります。
今回は「集会活動」で考えていきましょう!
「幸福感の高い集団」とは「自治的な集団」ということを確認しました。
「自治的」とは「自分達のことを自分達でする」とか「自分達の生活を自分達の力でつくる」と考えていいと思います。
そこで…
こんなふうに考えて、集会活動に取り組んでみてはどうでしょうか。
その方法を、これから具体的に説明します。
そもそも学級活動の目的は?
学級活動の目的は、子ども達の「生活改善」もしくは「生活向上」です。
今回の学級集会活動は【学級活動⑴】の内容です。
ですから、指導的な内容ではなく、以下のような内容を取り扱います。
★ 子ども自身が「改善したい」と感じている内容
★ 子ども自身が「こうなりたい」と願っている内容
こういった内容を、集会活動で解決していけるように仕組む、ということです。
なぜ集会活動なの?
これは単純に、
「子どもの興味関心が高い内容だから」です。
もう少し詳しく説明すると、子どもが心から「やりたい」と思った実践でなければ、教育効果は薄いと考えるからです。
また、小学校での実践を考える場合、いつも次のことを意識しています。
だからこそ、集会活動は学級の課題解決には、最適な方法だと考えています。
余談ですが、愛媛大学大学院教育学研究科教授・白松賢先生は、著書の中でこう書いています。
文化創造に向けて、例えば「学級のみんなで楽しめるようなイベントをしたい」「運動会を運動の苦手な人も楽しめるようにするには」といった「快の予感」を共有できる内容を題材にすると良いでしょう。
白松賢(2017)「学級経営の教科書」東洋館出版社
つまり、
学級内の問題解決をしていく際は、「楽しい」「ワクワクする」といった内容とセットで「学級づくり」を仕掛けていくことが有効だということです。
「問題を解決していく」ということは、言葉の響き自体も重く辛い道のりに聞こえます…。
ですからせめて、
「楽しいことをしながら解決していこうよ」くらいのスタンスで、考えてみてもいいのではないでしょうか。
具体的な実践方法
生活の課題を洗い出す
「生活の課題」というと、ネガティブに聞こえるかもしれませんが、そうではありません。
つまり、
先生が指摘するネガティブな課題ではないということです。
「子どもが目指している学級の姿」に近づけるように、実践を進めてください。
ですから、シンプルに子どもに聞いてみてください。
どんなクラスにしていきたいですか?
きっと子ども達からは、「もっと優しい言葉を使いたい」「もっとみんなで楽しいことをしたい」「もっと仲良くなりたい」「もっと笑顔を増やしたい」など、たくさんの「もっと…」が出てくるはずです。
子ども達は基本的に「自分たちの生活を向上させたい、もっと充実させたい」と、誰よりも願っている存在です。
ですから、先生が「こうなってほしいな」と願っている内容は、必ず子どもからも出てきます。
学級は「子ども達のため」にあるのですから、むしろ先生の願いは後回しでいいかな、とも思います。
子ども達の力を信じることが大切ですね。
集会の「目的」や「種目」の決定
例えば、昨年度、私が担任した6年生のクラスです。
5月に、子ども達はこんなことを言っていました。
一人一人を大切にしたいな。
なるほど。
じゃあ「一人一人を大切にする」ための工夫を考えた、「おにごっこ集会」をしよう。
最初の集会の種目は何にするか?ということで、「おにごっこ」にしよう、ということは、前もって決めていました。
集会の種目については、以下のようなことを事前に説明しました。
○集会は何回もやるから(係活動も合わせて)、年間を通して、必ず全員のやりたいものができます
○集会の目的(つまり「提案理由」や「めあて」)に応じて、種目のルールを工夫して、オリジナルの遊びに変えていくのが集会活動です
○どんな種目であっても、必ず「全員が楽しめる」ような工夫を考えるから、「私たちのクラスだけのオリジナルの遊び」になる
つまり、
「何をするか」ではなく「どのようにするか」を考えることが大切だということです。
何をするかは、事前にさっと決めておきましょう。
正直、種目は何でもいいのです。
それを子どもにも理解してもらいましょう。
このような、学級活動や集会活動の基本的な特性を説明すると、子ども達も
「どんな種目でも、自分も楽しめるようにルールを工夫してもらえるのだな」と安心します。
子どもによっては、「この種目は楽しくない」と思い込んでいる子もいますが、みんなで本気になって楽しめる方法を考えれば、意外とどんな種目でも楽しくなります。
ひとつ補足すると、サッカーとか、バスケットボールとか、
難しい技能(ドリブルとか)が必要な種目は要注意です。
それは、全員でやるよりはむしろ、それを好きな人達で休み時間にやった方がいいのではないかな?ということは、伝えてもいいかもしれません。
その種目が持つ「楽しさの特性」自体が難しい場合、そもそも遊びの入り口にさえ、立てない子どもが出てきます。
サッカーもバスケットボールも、ドリブルやシュートがある程度できないと、楽しめないですよね?
おにごっこなどは、「追いかけて・逃げる」だけなので、誰でもできます。
そういった
シンプルな種目ほど、オリジナルのルールを考えやすいと思います。
実際の学級会で話し合ったこと
めあては「一人一人を大切にする工夫を考えよう」でした。
子どもから出た、クラスの課題がそのまま「話し合いのめあて」となっています。
○「増えオニ」と「ハンター」に意見が分かれた
○「増えオニ」だと、オニになったらもう追いかけられる楽しさがない
○結局「増えオニ」は足の速い子だけが楽しいものになる
○「ハンター」は、捕まった後が暇になって楽しくない
○結局「ハンター」も足の速い子だけが楽しいものになる
困りましたね。
足の速さに関係なく、全員が最後まで楽しめるようなルールの工夫について、何かアイディアはありませんか?
「オセロおにごっこ」にしたらどうかな?
① 帽子の色で「赤チーム」「白チーム」に分かれる
② 赤チームは白チームの人をタッチ、白チームは赤チームの人をタッチし合う
③ 最終的に、赤白で人数が多かった方が勝ち
④ 足の速さに関係なく、全員が最後まで楽しめる!
これには全員、「おぉ〜!」と納得でした。
悲しむ仲間が1人もいないように、「全員が楽しめる工夫をしよう」と本気で考えたからこそ、出てきたアイディアです。
学級活動の
「工夫を考える(どのようにするか)」というのは、非常に難しい「問い」なのです。
だって、明確な正解がないのですから。
同じ目的で話し合っても、クラスの数だけ答えが存在すると思います。
誰にとっても難しい問いを解決するからこそ、学級活動は子どもが燃えるのです。
学級会では、「全員の思いを叶えるためのアイディア」を創り出す・生み出す、という経験をすることが大切。
その経験の積み重ねが自信となり、「自治的な学級」へと育っていきます。
実践する
ここも大切なところです。
自分たちが考えたアイディアを実際に試してみる場面です。
きっと、想定外の出来事や、うまくいかないことも出てきますが、先生は側でそっと寄り添っておきましょう。
大切なことは、集会が始まる前に「集会の目的をもう一度確認する」ことです。
何のためにやるのか、どういった態度で集会に臨む方がいいのかを、全体で確認してから、集会をスタートさせましょう。
先生は、実践場面を一緒に楽しむのもいいですが、ビデオや写真などで「記録」をしておいた方がいいです(固定カメラでもOK)。
実践後の振り返りが大切なので、その時に役に立ちます。
先生のためのカメラを紹介している記事もありますので、興味がある方は「先生のためのアクションカメラはこれ」も読んでみてください。
振り返り・共有する
集会は、やりっぱなしでは効果が薄いです。
「何がうまくいったのか」「もっと良くしたいことは何なのか」ということを、しっかりと振り返りましょう。
そして、次回はもっとよい実践にしていこう…の繰り返しです。
例えば、集会後にワークシートを書いてもらってもいいと思います。
また、実際に集会時のビデオや写真があるはずなので、
先生からは「よかった場面」を積極的に伝えましょう。
先生からは、「よかった場面」を伝えて、価値づける。
「もっと良くしたいところ」「がんばりたいところ」は、必ず子どもから出てきます。
課題は、子どもの口から語られた内容の方が、「どうにかしなければ」という学級全体の課題意識につながります。
年間を通して実践することが大切
学期ごとの成長が見える
この実践は、打ち上げ花火的に、単発で取り組んでしまうと、効果が薄くなり、もったいないです。
逆に、
年間を通じて実践すれば効果絶大です。
目安としては「学期に2回〜3回(3学期制の場合)」でいいかと思います。
もう少し詳しく言うと…
○1学期は3回
(学級のスタート時期で、なるべく多くの集会を経験した方がいいため)
○2学期は2回
(2学期は行事も多いので)
○3学期は1回
(学級の集大成となる大きな集会を1つ行う)
きっと学期ごとに、子ども達の「目指す学級の姿」も変化しているはずなので、学級の成長も見ることができて、より効果的だと思います。
今回の記事では1学期当初の、5月の実践を紹介しました。
その後の実践も知りたい方は、
【幸せな学級をつくるには「集会活動」が効果的です】の記事も読んでみてください。
結果、どうなったのか
最初はみんな「仲の良い友達とだけ遊ぶ」って感じだったけれど、だんだん「誰とでも」とか「みんなで」という風に変わっていった。
「合言葉をつくろう」の時から、みんなが優しい言葉遣いをするようになった。例えば、相手に反対するときに、相手を尊重しながら反対するようになった。
クラスの良いところが見つかり、増えていった。個人の良いところも増えた。
集会は「楽しい」とかじゃなく、「楽しむ」ということがわかった。
集会をやるたびに、みんな仲良しになれた気がする。
苦手な遊びでも、見方を変えて、面白く考えれば、何でも楽しく思えてくる。
みんなが楽しめるような工夫を考えることができるようになった。
前までは、全員で何かをするのが好きではなかった。今では大人数でも最高に楽しい。
学級活動は「共通の仲が良くなる時間」だった。
学級活動は、相手を認める、認めようとする場所。
私たちのクラスでしか考えられないような工夫をして、活動していたから、本当に全部の学級活動が楽しかった。
みんなと遊んだりして親しくなり、クラス全体の雰囲気も最初よりはるかに良くなった。とても楽しい時間だったし、何より幸せでした。