2学期が始まり、教育活動をスタートする上で、まず取り組まなければいけないのが、感染症対策でした。
しかも、子ども達が能動的に、意味を感じながら対策に取り組む必要があります。
こうした指導は「先生のお説教や説話」で行うと、子どもの学習意欲を低下させる可能性があります。
こんな時こそ、学級活動⑵の出番です。
子ども達が「自分で考えてやらなくちゃ!」と思えるしかけと、ワクワクしながら取り組める実践を創り出します。
ちなみに、今回の記事で紹介するのは、「コロナにまけない」という、1年生の実践です。
単純に「コロナ対策の題材」という見方ではなく、
「学級活動⑵の授業の在り方」を提案するものとして書いています。
皆さんは学級活動⑵の授業をどのように進めていますか?
一緒に考えていきましょう。
すぐに効果が出る「学級活動⑵の授業」
「すぐに効果を出す」ためには、前提となる条件があります。
それは…
○ 子どもにとって切実な題材となっている
○ 子どもが自分でやるべきことを決めている
○ すぐに実践が始まる
(授業と実践までの時間差がない)
当たり前のことに思うかもしれませんが、
この条件を満たすための、「具体的な手立て」を説明できるでしょうか。
私はあまりできませんでした。そこで、この授業を通して、そういった条件を一つずつクリアする方法を考えていきました。
子どもにとって切実な題材にする方法
学級活動⑴の議題は、子どもや学級の実態に応じて、子どもと一緒に選定していきます。
しかし、学級活動⑵の題材は、学級や学校・地域の実態に応じて、先生が題材を設定していきます。
ですから、子どもにとっては切実感をもちにくい学習であると言えます。つまり…
ということです。
こうした切実感をもたせるためには、いくつかの方法があります。
今回の記事では3つ考えていきます。
子どもから提案された課題のみ、学級活動⑵の題材にする
子ども主体の学習になっているように感じますが、
これは正直「論外」です。
なぜなら、学級活動⑵は
先生の意図性をもって
○ 子どもに必要な自己指導能力を育てる
○ 子どもの潜在的な課題を解決する
ための学習でもあるからです。
つまり、子どもが
「自分だけでは気づき得ないような課題」にまで、目を向けさせることも目的なのです。
授業を終えた後、
「今まで考えたこともなかったけれど、この実践を続ければ、さらに素敵な自分になれそうだな」と、子どもが実感できることがゴールだと思います。
学級の出来事や状態を思い出させて、課題を指摘する
これは悪くはないのですが、「出来事や状況を思い出させる」ための効果的な方法が、あまり思いつきません。
つまり、
頭で「思い出させる」という方法だと、課題へのイメージに個人差が出ます。ですから…
「理解に対する個人差を少なくしたい事柄」は可視化して、提示する必要があります
しかし、課題となる状況を子どもに思い出させることは、意外と難しいのです。
例えば「あいさつ」に関する題材を扱ったとします。
先生が、「朝のあいさつの様子を思い出してごらん」と言った時、鮮明にイメージできる子と、何が課題なのか全然見えない子がいるはずです。
学級活動⑵では、全ての子どもが「どうにかしなくては」と切実に感じる必要があります。
少なくとも「確かに問題がある」くらいに感じなくては、授業が成立しません。
それを打開する策として、
「写真や動画で見せる」という方法も考えられます。
つまり可視化ですね。
しかし、
「ネガティブな場面を可視化する」ことは、個人的には反対です。
先生がネガティブな場面も撮影すると知ったら、きっと写真嫌いになる子どもが生まれます。
写真が不快なものになってしまうのです。
高学年の子どもには、先生が撮影しようとすると、写りたがらない子もいます。
単純に発達段階もあるかもしれませんが、私はいつも
「先生は、みんなの良いところしか、写真には写さないよ」と伝え、安心してもらうようにしています。
アンケート調査で可視化する
最も「あるある」の方法ですが、やはりこれが無難だと思います。
アンケートは一般的な方法ですが、あとは授業における先生の働きかけで、秀逸な資料へと変化させることができます。
ということが、大切です。
つまり、子どもが
アンケートの結果から「課題に気づく」まで、先生は慌てずにしっかりと「待つ」ということです。
私が今回の記事で紹介するのは、1年生の実践です。
1年生でもアンケート結果から、しっかりと課題に気づくことができます。
ですから、どの学年でも可能です。
まず、事前に行ったアンケート結果のうち、この2つだけを見せます。
これを見ると青色の部分が多く、子ども達は概ね「コロナウィルスのことをよく知っている」ということがわかります。
序盤は「みんなすごいね。よく知っているね」というふうに、子ども達を褒めます。
このあと、逆転現象を起こします。
お気づきでしょうか?
青い部分が減り、オレンジやグレー、黄色い部分が多くなりました。
つまり、
子ども達は「コロナについてよく知っているものの、対策はうまくできていない」という矛盾が見えるわけです。
これが逆転現象です。
これに気がつくと、子ども達は「なんとかしなくちゃいけない」を切実に感じるわけです。
しかも、可視化効果もバッチリです。1年生は「全部青にしたい!」と発言していました。
子どもが自分でやるべきことを決める方法
アンケート結果を子どもに見せた時、そこから「課題を発見する」「課題に気づく」時間は、十分にとったほうがいいです。
先生は、子ども達の発言やつぶやきを聴きながら、じっくりと待ちます。
すると、課題を捉えた子どもは、すぐに「これから自分がやりたいこと」のアイディアまで出し始めます。
つまり、
子どもは課題に気づくことさえできれば、「もっと自分をよりよくしたい」と、自然に考えるのです。
そして、そのためのアイディアを生み出そうとします。
あとは、仲間の意見を参考にしながら、自分が取り組みたいことを決めていきます。
しかし、
いきなり「自分の取り組むこと」を決めてしまったのでは、質の低い、効果の薄い実践になりがちです。
ですから…
「なぜできなかったのか」という原因を、しっかりと「さぐる」ということが大切です。
原因を探れば、
「わかっているのに出来ない自分」や「わかっているのに取り組めない状況」がはっきりと見えてきます。
それを知った上で「自分が取り組むこと」を考えると、
生活改善に向けて達成可能・実現可能な、本物のアイディアが生まれてきます。
すぐに実践を始める方法
これはズバリ!
授業中から、実践を始めてしまいましょう。
つまり…
授業の後半は「実践の時間(自分で決めたことを始める)」とする。
45分間の授業を、「話し合い」や「決める」だけの時間にしては、もったいないです。
せっかく「自分が取り組むこと」を決めて、やる気を出しているのですから、さっそく実行させましょう。
今回の私の実践では、分散登校中の授業だったので、同じ授業を2回やりました。
このようなワークシートを使って、一人一人が取り組むことを意思決定しました。
これは予期せぬことでしたが、2回の授業では、どちらの授業でも
そこで、どちらの授業で出てきた内容も、学級全員で取り組むことにしました。
こういったアイディアが出てきて、授業の後半は実際に取り組んでみました。
全員で家にはるポスターを書いたり、実際に手を洗ってシールを貼ってみたり(授業では20秒以上洗うことになりました)、といったことをしました。
決めたことをすぐに実行できると、授業や学習の意味をより強く実感できます。
それから1週間以上経ちましたが、いまだに手洗いシールは続いていますし、新しいポスターを書く子どももいます。
子ども達の生活は明らかに改善・向上しています。
つまり…
ということなのです。
学級活動⑵ 授業の在り方を提案
学習過程のバランスを考える
一般的に、学級活動⑵の学習過程はこのようになっていますよね。
授業の中では①〜④までをやって、⑤の「実行する」については、授業が終わってから「じゃあさっそく今日から、各自で実践しましょう」みたいな感じになることが、多いのではないでしょうか。
学級活動で一番大切なのは「実践」であるはずなのに、それを授業内で扱わないのであれば、子どもが「実践することが大切」だと実感するのは難しいと思います。
また、肝心な実践の評価はどうするのかな…と思います。
1時間の授業内で、ある程度実践の見取りや評価まで行えるようにしなければ、効率も悪いですよね。
ですから…バランスを考えたいと思います。
①つかむ+②さぐる・・・・・・・20分
③見つける+④決める・・・・・・10分
⑤実行する・・・・・・・・・・・15分
(この時間もしっかりと設定する)
例えばこんな感じで、後半は確実に「実行する」時間を設定します。
必ずこの時間配分で行う、というわけではないですが、「どこに時間をかけるのか」ということです。
①と②の質を高めなければ、③と④は「机上の空論」的な、上っ面だけのものに決まり、実践の継続は難しくなります。
逆に①と②の場面で、しっかりと子どもの声をひろい、つなぎながら課題をつかみ、原因を探っていけば、子どもにとって切実な、本物の題材となります。
打ち上げ花火的実践にしないために
題材が子どもにとって切実なものとなり、どんなに良質な意思決定を行ったとしても、それを継続していくことが難しいのが人間です。
では、学級活動⑵の授業で、子どもが意思決定した実践を、子どもだけの力で継続させるためには、どうすればいいのでしょうか。
そのためには、「実行する」場面を、確実に授業の後半に15分程度、入れて欲しいと思います。
授業の中で実践をすると、先生は子ども一人一人が実践している場面を、じっくりと見ることができます。
そうすると何が起こると思いますか。
これが、大きな効果を生みます。
人は、ある行動をした時に、“褒められる”などの「快の感情」を経験すると、その行動を繰り返す、という研究結果があります。
授業中に実践場面を設定することで、
先生はたくさんの子ども達を褒めることができます。
その結果、子ども達は「自分で決めた取り組みを継続したい」という気持ちになっていくのです。
終わりに
学級活動⑵は、一見すると先生の「指導性が強い」学習だと思われる節があります。
または、「きちんと指導はした」という自己満足や、説明責任の材料になってしまう可能性も高いです。
そうではなく、
学級活動⑵は子どもの「自己実現」に向けて、より即効性の高い学習だと考えていきたいです。
それは、先生の強い指導によって、もたらされるものではないはずです。
子どもが課題への切実感を感じ、自分で解決策を考え、「やってよかった」という手応えを味わう経験を通して、自己指導力を身につけられるようにしたいです。
そのためにも、「45分間の授業でどのような活動を設定するのか」ということは、慎重に吟味をしたいと思うのです。
コロナ関連の実践は他にも、
「コロナから身を守る」という授業もあるので、そちらもご覧になってください。